最新記事

金融

波乱に満ちた2010年代 世界の金融市場を一変させた10のトレンド

2019年12月24日(火)14時11分

シェールオイル

「水圧破砕法(フラッキング)」により米国は世界最大の産油国となった。生産量は日量1250万バレルと2010年の2倍だ。このうちシェールオイルは日量900万バレルを超える。2010年は100万バレルに届かなかった。米国は40年ぶりに石油の純輸出国となった。

シェールブームはエネルギーに関する議論がピーク供給からピーク需要に切り替わった一因だ。原油生産の急増は環境への懸念につながり、石油の供給過剰が供給不足よりも起こりやすくなる。

世界の自動車産業は1世紀以上にわたって内燃エンジンに依存してきたが、電池を搭載した自動車が業界の地図を変えつつある。電気自動車(EV)メーカー、米テスラの株価は2010年の上場時は17ドルだったが、現在は380ドルだ。

新世代のEVの開発に数千億ドルが投じられている。自動車用バッテリー業界は急成長しており、主要材料であるリチウムの需要は2025年までに3倍になる可能性がある。

これまでのところEVの販売台数は期待外れだ。現在販売されている100台のうちEVは2台にとどまっている。ガソリン車やディーゼル車のほうが安い上、EV用の充電インフラは限られていることが背景にある。

しかし地球温暖化への警戒感が高まり、政府が消費者のガソリン消費を抑えようとする中で、EV革命は止まらないようだ。

アルゴリズムとフラッシュクラッシュ

テクノロジーによる変革の力は為替取引にも及ぶ。10年前、ディーラーが銀行と顧客のために売買を行っていた。今日、電子取引は一部の商品の9割を占め10年間で倍増した。

もう一つのシフトがアルゴリズムだ。10年前にはほとんど存在していなかったアルゴリズム取引は現在Refinitiv FXallの為替スポット取引の20%を占めている。また国際決済銀行(BIS)はEBSでは注文の80%強がアルゴリズムによるものと推定している。

副作用の一つは為替レートが短時間で乱高下する「フラッシュクラッシュ」が頻繁に起きるようになったことだ。

こうした中、最も洗練されたアルゴリズムを入手できるものが勝ち組となる。世界の為替取引のほぼ半分を上位5行の銀行が扱っており、小規模な金融機関、そしてトレーダーは撤退を迫られる。

大麻

大麻はこの10年間で街角から株式市場へ移動(トリップ)した。2018年にナスダック市場に上場したカナダの医療用大麻大手ティルレイは米株式市場に上場する初の大麻企業となり、初日に36%急伸した。カナダが娯楽用大麻を合法化してから1年半で数百の大麻銘柄が取引されている。

大麻関連株はまた資産バブルも生んだ。オーロラ・カナビスやキャノピー・グロースなどの銘柄は「グリーンラッシュ」ともてはやされ、株価は数倍に上昇し2018年10月に頂点に達した。大麻関連銘柄のベンチマークであるオルタナティブ・ハーベストETFの上位10銘柄は時価総額が500億ドルに膨らんだ。しかし1年後、300億ドルが煙と化した。

高値からは下落したが大麻株が消えてなくなることはない。2020年はロンドン市場に一連の大麻株が上場するかもしれない。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191224issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月24日号(12月17日発売)は「首脳の成績表」特集。「ガキ大将」トランプは落第? 安倍外交の得点は? プーチン、文在寅、ボリス・ジョンソン、習近平は?――世界の首脳を査定し、その能力と資質から国際情勢を読み解く特集です。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、10日に有志連合首脳会議を主催 仏

ワールド

中国商務相、ロシア経済発展相と会談 経済・貿易を巡

ワールド

ブラジル大統領、トランプ関税を非難 プーチン氏との

ワールド

米中、一時的関税停止の可能性 週末の高官協議=スイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 8
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中