金融市場にリスクオフのマグマ 株高でも「恐怖指数」先物売りが過去最大

米中通商協議の進展期待の高まりを背景にリスクオン相場が続くなか、逆回転を起こしかねない「マグマ」も溜まっている。写真は弱気を意味する「ベア(クマ)」と強気を意味する「ブル(オウシ)」の像。2015年12月17日、ドイツのフランクフルト株式市場前で撮影(2019年 ロイター/Ralph Orlowski)
米中通商協議の進展期待の高まりを背景にリスクオン相場が続くなか、逆回転を起こしかねない「マグマ」も溜まっている。市場が注視するのは、過去最大規模に積み上がった投機筋のVIX指数先物ショートポジションだ。先行きへの期待感が原動力というムード先行の相場だけに、ボラティリティの急上昇には警戒感も強い。
株高なのに上昇した「恐怖指数」
「恐怖指数」の異名を持つシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)<.VIX>。米株の過去最高値更新に沸く4日の市場で、じわりと切り上がった。
5日時点で13.10ポイントと、水準自体は過去と比較して低い。米中通商協議に懸念が強まった今年8月は20ポイントを越えていた。米株の最高値更新というタイミングで、利益確定的にVIX先物のショートポジションが多少買い戻され、VIX指数が上昇しただけの可能性もある。
しかし、市場参加者は神経を尖らせてその動向を見つめている。通常、株高なら低下するボラティリティが逆に上昇したということだけでなく、VIX先物が、足元のリスクオン相場をリスクオフに転換させるだけの「エネルギー」を蓄えているためだ。
米商品先物取引委員会(CFTC)が1日に発表した、投機筋のVIX指数先物のネットショート<11170E1NNET>は、18万7948枚。今年4月の18万0359枚を超え、比較検証できる2006年8月以降で、過去最大に積み上がった。
「過去をみると、14万枚を超えると、ポジションの巻き戻しによるVIXの上昇を伴い、S&P500指数<.SPX>が下落している」と、みずほ証券のシニアテクニカルアナリスト、三浦豊氏は指摘する。
昨年2月の「VIXショック」
市場の一部で警戒されているのは昨年2月の再現だ。VIX指数が一時50ポイントまで急上昇。連動して株価が急落する「VIXショック」を巻き起こしたからだ。
ボラティリティと連動するファンドを組むリスク・パリティ・ファンドからの株売りが出たほか、低いボラティリティ(つまり米株が急変動しない)に賭けていた上場投資商品(ETP)の価格が急落、早期償還も相次いだ。
「リスクオフにつながるネガティブな材料が出れば、巻き戻しが必ず起きる。(投機筋のVIX指数先物のネットショートは)株価にも大きな影響を与える規模に積み上がっている」とマッコーリーキャピタル証券の増沢丈彦氏は警戒する。