金融市場にリスクオフのマグマ 株高でも「恐怖指数」先物売りが過去最大
ただ、一斉にリスクポジションが巻き戻された当時とは異なるとの指摘もある。野村証券のクロスアセット・ストラテジスト、高田将成氏は「ヘッジファンド全体で株式のエクスポージャーが積み上がっているわけではない」と指摘。VIX先物ショートが解消時の「マグニチュード」は、VIX指数が16─20に上昇する程度と分析している。
ショートポジションの拡大は「コンタンゴ」現象も一因だとみられている。先物の受け渡し期日が近くなるほど減価(下落)するコンタンゴ状態では、ショート(空売り)すれば利益が出る。こうした期間構造を利用したスプレッド売りがショート拡大の一因になっており、ボラティリティの低下に連動するトレードが増えているわけではない可能性もある。
またショートが14万枚を超えたからといって、ただちにVIX指数が上昇し、株価が急落するわけではない。昨年2月のケースでは、17年9月に17万枚を記録したあと、2月に8万枚超のロングに転換するまで、約5カ月かかっている。
「期待感」が支える株高
しかし、いまのリスクオン相場の原動力は「期待感」。米中通商協議の進展期待や企業業績の底打ち期待など、先行きが改善するとの予想が株高を支えている。
期待で買うのが株式市場ではあるが、リスクオンに傾いているマーケットでは、経済指標や企業業績を良く解釈しがちだ。7─9月期の企業業績は米国、日本とも減益の見通し。米ISM指数は、非製造業は堅調だが、製造業は10月まで3カ月連続の50割れとなった。
SMBC日興証券の野地慎氏の試算によると、米ISM製造業景気指数が示唆するS&P500は前年比マイナス5%。しかし、10月は6.9%高だった。PER(株価収益率)は21倍を超えてきている。
米株は過去最高値を更新しているが、上海総合指数<.SSEC>は依然として3000ポイントを回復していない。「大統領選を控えた米国側は通商合意に前のめりだが、中国の習近平国家主席は、わざわざ米国のアイオワまで出かけていくだろうか」(国内証券)との指摘もある。
前月25日のシカゴ・オプション取引所で、VIXの65ポイントが権利行使水準である2020年4月物のコールオプションが成立。1枚10セントで5万枚買われ、市場の話題になった。VIX指数が65を超えると利益が出るポジションであり、いまの5倍以上に上昇すると見込んでいる取引だ。
VIX指数の30日後の変化を示すVVIX指数<.VVIX>はまだ低い。VIX指数が急激に動きそうだとの見方はまだ少数派だ。だが、市場のセンチメントが転換すれば、一気に逆回転する可能性のある「ムード相場」であり、警戒感も強い。
(編集:佐々木美和)
[東京 6日 ロイター]


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