最新記事

精肉vs人工肉 スーパーで密かに進む売り場の陣取り合戦

2019年6月17日(月)10時50分

アナリストは、ビヨンド・ミートの販売戦略は競争相手に比べて「非常に有利」であり、2035年までに1000億ドル(10兆8000億円)規模に成長するとみられる米国の植物性肉市場において、最大限のシェア獲得を後押しする差別化要素だと指摘している。

投資家もこのビジネスモデルを好感しており、ビヨンド・ミートのバリュエーションは、同社側が利益を生むことはないかもしれないと表明しているにもかかわらず、5月2日に上場した際の15億ドルから60億ドル超に上昇した。

だが、小売業者9社に取材したところ、ビヨンド・ミート側は自社製品を本物の肉と同じ売り場で売るよう要請してはいるが、契約上の義務ではないという。

22州で約160店舗を運営する「ザ・フレッシュ・マーケット」では、ビヨンド・ミート製品を、他のベジタリアン用バーガーと一緒に冷凍ケースや乳製品売場で販売し、売り上げを見つつ長期的な売り場戦略を練っているという。

「冷凍ケースがまず思い浮かんだ。さもないと、われわれの顧客は、どこに行けば製品があるのか直感的には分からないだろう」と、同社のドワイト・リッチモンド氏は言う。

大手クローガーや小売り大手ターゲット、アマゾン傘下のホールフーズ、ウォルマートなど、ビヨンド・ミート製品を扱う大手にも取材を申し込んだが、回答がなかったか、販売戦略についてコメントを拒否した。

カリフォルニア州南部で28店舗を展開するゲルソンズで精肉や魚介類を担当するショーン・サエンス氏は、当初冷凍ケースにビヨンド・ミートの製品を置いた時は、売り上げはさえなかったと話す。

だがバーガーを冷凍ケースから別の場所に移すと、売り上げが60%上昇したという。ビーガン食品全体の売り上げも20%上昇した。

「ビヨンド・ミート製品の売り上げの6─7割はビーガン食品の売り場」であり、精肉売り場での売れ行きは「衝動買い的なものがほとんど」だと、サエンス氏は話した。

「精肉と同じ規模まで大きくなることはないと思うが、確実に売り上げを押し上げている。小売業者なら、どこでもありがたがることだ」と、同氏は付け加えた。

消費者の混乱

精肉売り場は、スペースが限られているほか、腐りやすい肉を冷蔵しておく必要があるため、スーパー内で最も制限の多い場所の1つだと、小売業協会であるフード・マーケティング研究所で生鮮食品を担当するリック・スタイン氏は言う。

小売店では、タイトな精肉売り場を削って植物性肉の売り場を作り、売り上げを伸ばすためベーコンやソーセージ、ハムの隣に置いているという。

こうした動きに対し、米国肉牛生産者協会(USCA)は、精肉売り場は本物の肉専用にすべきで、植物性肉を置けば消費者が困惑し、精肉売り場の信頼が揺らぐとして反発している。

「これらの植物由来の(製品を作る)企業は、長年かけて消費者の信頼ある健康的なブランドを築き上げてきた牛肉業界に便乗している」と、USCAのリア・ビオンド氏は批判する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ協議は「生産的」、ウィットコフ米特使が評

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、今後数カ月の金利据え置き

ビジネス

再送-〔アングル〕日銀、追加利上げへ慎重に時機探る

ワールド

マクロン氏「プーチン氏と対話必要」、用意あるとロ大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中