最新記事

精肉vs人工肉 スーパーで密かに進む売り場の陣取り合戦

2019年6月17日(月)10時50分

植物由来の代替肉メーカー米ビヨンド・ミートは、自社製品は米スーパーの「精肉売り場」に並ぶ世界初の植物性バーガーであるとうたい、本物の牛ひき肉や豚肉ソーセージに真正面から戦いを挑んでいる。米カリフォルニア州エンシニータスのスーパーに並んだビヨンド・ミートのソーセージ・。5日撮影(2019年 ロイター)

植物由来の代替肉メーカー米ビヨンド・ミートは、自社製品は米スーパーの「精肉売り場」に並ぶ世界初の植物性バーガーであるとうたい、本物の牛ひき肉や豚肉ソーセージに真正面から戦いを挑んでいる。

だが米国のスーパー各社に取材したところ、小売業者はビヨンド・ミートの製品をどの売り場で扱うべきか頭を悩ませていた。現段階では、同社が求める精肉売り場ではなく、ビーガン(絶対菜食主義)食品売り場が優勢なようだ。

精肉売り場に早く地歩を築こうとする新興のビヨンド・ミートと、同業のインポッシブル・フーズや食品大手ネスレ製の植物性肉が参入してくる前にこれを迎え撃とうとする食肉業者との間で、スーパーの売り場を巡る熾烈(しれつ)な戦いが起きている。

全米19州で150店舗を運営する自然食品スーパーのビタミン・コテージ では、ビヨンド・ミートの製品は、消費者の混乱を避けるため精肉売り場ではなく豆腐などの代替たんぱく質を扱う冷蔵ケースで販売しているという。

ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカットの各州と首都ワシントンにある「キングズ・フード・マーケッツ」と「バルドゥッチズ・フードラバーズ・マーケット」の計35店舗では、ビヨンド・ミートの製品は乳製品と精肉の両方の売り場で売られている。

「両売り場ともに、売れ行きは好調だ。消費者は、新しいカテゴリーの食品だと受け止めているようだ」と、両スーパーを経営する投資会社KBホールディングスのスティーブン・コラディーニ氏は言う。

北西部に展開する「タウン&カウンティ・マーケッツ」や、ニューヨークが本拠地の「モートン・ウィリアムズ・スーパーマーケッツ」、そして中西部の「フレッシュタイム・ファーマーズ・マーケット」などのチェーン店でも、どこの売り場に置かれたかにかかわらず、ビヨンド・ミートの製品の需要は極めて高いと、コラディーニ氏と同様の話が聞かれた。

ビヨンド・ミートや他の植物性バーガーのメーカーは、肉と真っ向から対峙(たいじ)する構えだ。ビーガンやベジタリアン(菜食主義)といった言葉は使わず、菜食主義の客が豆腐やテンペなどの植物性たんぱく食品を買いに来るビーガンの売り場には自社製品を置かないよう、店側に要請している。

同社のターゲットは、健康リスクや動物の取り扱い、また伝統的な畜産がもたらす環境破壊への懸念から肉の消費を減らそうとしている多数派の消費者であり、そのため製品の見た目や味、調理方法を一般的な牛ひき肉のバーガーに似せている。

同社のサイトでは、エンドウ豆のたんぱく質とココナッツ油、キャノーラ油が原料のソーセージやバーガーのパティについて、こう説明している――「精肉売り場で販売中」と。

ビヨンド・ミートは、規制当局に提出した書面で、売り場が変われば新たな顧客を引き付けることができなくなり、肉類に対抗できなくなって成長が阻害されかねないと訴えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に

ビジネス

トランプ氏、8月下旬から少なくとも8200万ドルの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中