最新記事
経済超入門

世界を動かすエコノミストたちの成績表、最低評価はあの人...

2017年12月26日(火)16時30分
ニューズウィーク日本版編集部

(左から)黒田東彦(日本銀行総裁)、トマ・ピケティ(経済学者)、ジャネット・イエレン(米FRB議長)、ポール・クルーグマン(経済学者) FROM LEFT: Yuri Gripas-REUTERS, Charles Platiau-REUTERS, Joshua Roberts-REUTERS, Chip East-REUTERS


nweconomicsbook_cover150.jpg<経済学はノーベル賞まで用意される「高貴」な学問だ。経済学者は世界経済に大きな影響力を持つが、政治家のように振る舞って批判を受けたり、周囲の圧力にさらされたりと、その「成績」を酷評されるつらい稼業でもある。そんな経済学者たちを評価してみると――(※『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来(ニューズウィーク日本版ペーパーバックス)』より抜粋)>

★は編集部による評価
5つ星が最高

ポール・クルーグマン

krugmanstars.jpg
経済学者
Paul Krugman

29歳でレーガン米政権の大統領経済諮問委員会のメンバーに選ばれるなど、若くして名を知られた。ノーベル経済学賞(08年)の授賞理由は新しい国際貿易理論の確立だが、最近は緊縮財政の「超」批判論者として注目を集める。

政府は財布のひもを締めすぎるべきでないとして、借金ゼロを達成したドイツも「大惨事に向かう」と主張。批判の矛先は小国にも向けられる。12年には、緊縮財政の成功例にあげられるエストニアを「これが成功?」とニューヨーク・タイムズの自身のコラムで痛烈批判したが、当時のイルベス大統領に「われわれはバカで愚かな東ヨーロッパ人。今はあなたの理論を理解することなどできない」と、皮肉を込めたツイートでやり返された。

政権から距離を置き、他のリベラル派経済学者も驚くほど激しく緊縮財政を非難するクルーグマンは、どこか孤高の哲学者のようだ。緊縮か積極財政か。答えの難しい経済問題の一つだが、凡人たちにも彼の理論を理解できる日が来るのだろうか。

ジャネット・イエレン

yellenstars.jpg
米FRB議長
Janet Yellen

「世界の中央銀行」とも称されるFRB(連邦準備理事会)のトップに立つイエレン。14年に副議長から議長に昇格したが、経済学者や市場関係者の間での評判は上々だ。08年秋のリーマン・ショック後の金融緩和措置とその後の利上げを巧みにコントロールし、失業率やGDP成長率で一定の成果を上げたことが評価されている。

そんなイエレン率いるFRBだが、一般市民の評価はぱっとしない。アメリカの行政機関の中では支持率が最も低い組織の一つで、建国当初は中央銀行など不要とさえ言われたほど。中央集権的な組織へのアメリカ人の嫌悪感は今も根強く、撤廃論こそ影を潜めるが懐疑派の批判は続く。その筆頭は「FRBは違憲」という議論だ。

ワシントンを本拠地とするFRBは、地方の「支店」に当たる12地区の連邦準備銀行をもっている。そのトップはそれぞれの役員会で選出されるが、役員は民間銀行の代表を兼任していることが多い。公的機関の高官職は上院での審査を経るが、連銀の「支店長」は対象外。事実上、民間人が決定していることが違憲であり、連銀と民間銀行の癒着の温床ともいわれる。

さすがのイエレンも、この制度を変える力はなさそうだが。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、国民に「直接資金還元」する医療保険制度

ビジネス

MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに最大

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

中国過剰生産、解決策なければEU市場を保護=独財務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中