最新記事
経済超入門

世界を動かすエコノミストたちの成績表、最低評価はあの人...

2017年12月26日(火)16時30分
ニューズウィーク日本版編集部

ジョセフ・スティグリッツ

stiglitzstars.jpg
経済学者
Joseph Stiglitz

クリントン米政権で長らく大統領経済諮問委員会のトップを務め、世界銀行でも副総裁やチーフエコノミストを歴任するなど、スティグリッツは公的な経済機関での勤務経験が長い。といっても、権力にすり寄るタイプの経済学者ではない。むしろ近年は、一部の国にのみ利益をもたらすグローバリズムを拡散する経済機関を徹底的に攻撃している。

その筆頭はIMF(国際通貨基金)。スティグリッツがこの組織を「一流大学出身の三流エコノミストが集まる組織」とこき下ろすのは、IMFの過度の市場原理主義に我慢がならないから。経済危機の多くが途上国で起きているのに、先進国に重点を置く組織運営も気にくわないようだ。

情報の不完全性と非対称性を説き、市場経済の欠陥を指摘した論文が01年のノーベル経済学賞を受賞した彼の立脚点は反市場原理主義。その考えは、豊かであるはずのアメリカにも中学校に行けない貧しい国民がいる実情を知った幼少時代に培われた。

「アメリカ・ファースト」を唱えるトランプ政権をならず者国家と糾弾するのも、うなずける。

マリオ・ドラギ

draghistars.jpg
ECB総裁
Mario Draghi

あまり知られていないが、ECB(欧州中央銀行)の最大の目標はユーロ圏の物価安定。その実現のため、ECBには強い独立性と透明性が求められる。ユーロ加盟19カ国政府の思惑にいちいち左右されたり加盟国の経済政策に直接干渉せず、積極的に情報公開すべきと考えられているのだ。しかし、ECBには独立性も透明性もないとの批判は創設期からあり、後を絶たない。

非難が最も高まったのは2010年のユーロ危機。当時のジャンクロード・トリシェ総裁と後任に内定していたドラギがスペインとイタリアの政府へ送った「秘密の手紙」がリークされ、イタリアに労働市場改革などを要求していたことがわかった。要は「経済支援が欲しければ俺たちの言うことを聞け」ということだ。

経済危機に陥ったギリシャの救済をめぐるEU、IMF(国際通貨基金)との「トロイカ体制」も批判された。政治から独立するはずのECBが堂々と政治談議をし、一国の政府のごとく振る舞うことがやり玉にあげられた。

就任当時、その名前から「経済危機を救うスーパーマリオ」と期待されたドラギ。ヨーロッパは今のところ危機の再発を免れている。でも、「みんなに愛されるマリオ」には程遠い。

黒田東彦

kurodastars.jpg
日本銀行総裁
Haruhiko Kuroda

2013年の就任以来、次々と斬新な手法で世界を驚かせてきた日本銀行総裁の黒田。デフレからの脱却を錦の御旗に掲げる安倍政権の政策を実現するべく、「異次元の金融緩和」を続ける。

「黒田バズーカ」と呼ばれる金融緩和策で市場にはお金があふれ返っているが、それでも市場に出回る量が足りないとして、民間銀行が日銀に預けるお金に「手数料」をかけるマイナス金利まで導入。市場関係者もあきれるほどの量的緩和を継続する目的は、2%の物価上昇だ。それでも、黒田自身が「まだ遠い」と認めるように、物価目標は達成されていない。

政権との二人三脚ぶりは、もはや中央銀行の独立性という規律を度外視したようにも見えるが、「ルール破り」以上に恐ろしいのが日銀による「借金」のため込みだ。物価上昇のために政府が国債を発行し、それを中央銀行が買い取る手法は欧米でも見られる。だが、最近の日銀は群を抜いている。アベノミクス発動以降、政府が発行する国債の約4割を日銀が保有するに至り、さらに国債を含む債券全体の保有額はGDPの9割と、米FRBの4倍だ。

「バズーカ」で被弾するのが国民でなければいいが......。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

衆院選きょう投開票、自民が終盤まで優勢 無党派層で

ワールド

イスラエル首相、トランプ氏と11日会談 イラン巡り

ビジネス

EXCLUSIVE-米FRB、年内1─2回の利下げ

ワールド

北朝鮮、2月下旬に党大会開催 5年に1度の重要会議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 3
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本版独占試写会 60名様ご招待
  • 4
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 5
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 6
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 7
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 8
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 9
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 10
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中