最新記事
経済超入門

世界を動かすエコノミストたちの成績表、最低評価はあの人...

2017年12月26日(火)16時30分
ニューズウィーク日本版編集部

クリスティーヌ・ラガルド

lagardestars.jpg
IMF専務理事
Christine Lagarde

IMF(国際通貨基金)の主な仕事は加盟国の為替動向を監視し、経済危機に陥った加盟国に経済支援を行うこと。だが先進国の利益にかなうように、こそこそと途上国の制度を変えるとの批判が根強かった。2011年から女性初のIMFトップを務めているラガルドが評価されるのは、先進国を優先しがちだったIMFで、新興国の声をくみ取る姿勢を示したことだ。

その一方で、IMFの重要な仕事の一つである経済予測はどうかと言えば、これが全然ダメ。世界有数のエリートエコノミストが集まっているにもかかわらず、世界最大の「外し屋」といえるほど予測を外す。経済の先行きを必ずと言っていいほど楽観視し、過大評価する傾向があるからだ。

その原因としてあげられるのが、「統計をとる際に加盟国から圧力がかかり、結果的に偏った予測をしがちなこと」だ。最高峰の経済・金融機関だけに、その発言や予測値が各国経済に与える影響は絶大。IMFから及第点以下の見通しを示されれば、国内の株価下落や為替の不安定化、投資の減少につながりかねない。ラガルドといえども、加盟国への忖度からは自由になれない?

トマ・ピケティ

pikettystars.jpg
経済学者
Thomas Piketty

2014年に一大センセーションを巻き起こした『21世紀の資本』の著者ピケティ(本国フランスでは13年刊行)。976ページもあるお堅い経済学書が各国でベストセラーになったとあり、経済界を超えた議論を呼んだ。

「1%対99%」に代表される格差批判の高まる最中に格差を論じた同書は熱烈な支持を受けた一方、英紙フィナンシャル・タイムズが「結論をねじ曲げる一連の計算ミス」があったと調査報道で指摘。ピケティが使ったデータから同書の結論を導くことはできないとする批判も出た。

ピケティがアダム・スミスやカール・マルクスなど歴史上の偉大な経済学者に肩を並べるかを知るには、まだ時間がかかる。「資本収益率が経済成長率を上回る国では格差が広がる(r>g)」という理論だけが注目され、そこにいたった経緯や研究データの詳細が分析されつくしたとは言いがたい。

実際、周囲のエコノミストに『21世紀の資本』の感想を求めると、彼らの多くは気まずそうにこう答える。「まだ読んでいない」

※この記事は新刊『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来(ニューズウィーク日本版ペーパーバックス)』(ニューズウィーク日本版編集部・編、CCCメディアハウス)からの抜粋記事です。


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送フーシ派がイスラエル攻撃、イエメンの親イラン武

ワールド

再送-UAEのアブダビで5人負傷、火災も発生 ミサ

ワールド

タイ新政権、来週発足へ アヌティン首相が表明 

ビジネス

中国の大手国有銀3行、25年の利益ほぼ横ばい 不動
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    「酷すぎる...」ショッピングモールのゴミ箱で「まさ…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中