最新記事

旅行業界

JTBが民泊にも参入する「第3の創業」、モデル転換できるか

2017年9月29日(金)20時42分
松浦 大(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

ウェブサイトのみを展開するOTAは低価格販売や大量の広告費投入という戦略を展開。あっという間に、JTBのような伝統的な旅行会社を取扱高で追い抜いた。JTBも1998年から個人旅行のインターネット販売を本格的に開始。すでに20年近い歴史があるが、ネット販売が全体に占める比率は15%程度に過ぎない。

「世界の旅行業界はウェブ化とFIT(海外旅行の個人手配)化という2つの波にさらされており、どう向き合うかが問われている」(髙橋社長)。

toyokeizai170929-3.jpg

OTAの攻勢や欧州で相次いだテロの影響で、個人部門は苦境に立たされている(記者撮影)

「家族の絆を深められたか」まで掘り下げたい

そこで来春の組織再編では同社史上初めて、商品の企画部門と、実際に店舗で接客に当たる販売部門を同じ部署に統合。社内調整を大幅に減らし、機動的な商品企画の販売を打ち出せる組織に移行する。

今後は約750店を数える店舗とインターネットの販売比率も見直す方針だ。

一方で、JTBが強みとする法人部門には最大の経営資源を投入する。法人部門は出張や東京五輪やラグビーW杯などのスポーツ旅行に加え、MICE(会議、報奨・招待、国際会議、展示会などの総称)や、地方自治体の観光振興策などを扱う。

改革の先に見据えるのが、ビジネスモデルそのものの転換だ。

「今までは商品を売ることを最優先にしてきた。お客様に対し、ホテルはよかったですか、お食事はよかったですか、という問いかけしかできなかった。これからは旅行の目的・課題である家族の絆は深められたか、親孝行はできたかという部分にまでかかわっていきたい」(髙橋社長)。

toyokeizai170929-4.jpg

2019年のラグビーワールドカップに向けて、高級な食事や観戦券を組み合わせたスポーツホスピタリティ事業への参入も行う(2017年3月、記者撮影)

JTBは国鉄のチケットを代理販売するモデルを第1の創業、パッケージツアーを作り、大量に売るメーカーモデルが第2の創業と位置付けた。

今後は"第3の創業"として、個人や法人の顧客、社会が抱える課題に解決策を提示し、対価を得るソリューションモデルに転換を進める。

冒頭の事例では、大きなスーツケースを持って来日する観光客が手ぶらで観光できるようにJTBが商品販売を、パナソニックがシステムを、ヤマトHDが配送を分担して担当する。

民泊についても、地方自治体に地域経済の活性化策として、農家に泊まる農泊やお祭り時に提供するイベント民泊といった事業モデルを提案し、社会的な課題解決で収益を得る計画を立てる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 

ワールド

ウクライナ、米国の和平案を受領 トランプ氏と近く協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中