最新記事

旅行業界

JTBが民泊にも参入する「第3の創業」、モデル転換できるか

2017年9月29日(金)20時42分
松浦 大(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

9月21日の会見では、ユニークな動きのダンスを取り入れながら、訪日観光客向けの手ぶら観光サービス「ラゲッジ・フリー・トラベル」をアピールした(記者撮影)

「目指すのは課題解決型への転換、第3の創業だ」――。大手旅行会社ジェイティービー(JTB)の髙橋広行社長は熱く語る。

同社は9月21日にパナソニックとヤマトホールディングスと提携し、訪日外国人観光客が手ぶらで、旅行や観光ができる「ラゲッジ・フリー・トラベル」を2018年1月より開始すると発表。9月11日には民泊を手掛けるベンチャー企業の百戦錬磨(仙台市)に資本参加し、民泊への本格参入も開始した。

同社はこうした事業を社会課題の解決(ソリューションモデル)と位置付け、取り組みを加速させている。

12年ぶりに大規模な組織再編へ

こうした新事業の開始と同時に進めているのが、2018年4月に控えるグループの大型再編だ。JTBは2006年に首都圏や東海など地域会社に分割したが、今回は各社を本体に吸収合併し、"One JTB"として組織を再編。各社に分散する事業を個人、法人、グローバル(訪日や海外間)という3つのビジネスユニットへと組替えを行う。

改革を主導するのは2014年にトップに就任した髙橋広行社長だ。

toyokeizai170929-2.jpg

JTBの髙橋広行社長は徳島県出身。1979年に日本交通公社(現JTB)入社。高松支店長、JTB西日本社長などを経て、2014年6月から社長を務める。(撮影:今井康一)

JTBは1912年に創業、元々は国鉄のチケットを代理販売する事業を手掛けていた。

今は「旅行会社」とされている業界が、かつて「旅行代理店」といわれていたのはこうした代理販売モデルに由来する。

その後、1960年代後半からパッケージツアーの販売を開始。宿泊施設や航空会社との強固な関係、国内最大の店舗網を擁する圧倒的な規模を生かし、パッケージツアーの販売で成長を遂げた。現在の取扱高は約1.6兆円と国内では断トツ、世界でも有数の規模を誇る。

ただ、近年はOTA(オンライン旅行会社)に大きな差をつけられている。1996年に米マイクロソフトの一部門として創業し、独立した米エクスペディア。2006年にオランダのOTA、ブッキングドットコムを買収した米プライスライングループはいずれも、8兆円前後の取扱高を誇る。

OTAの台頭によって、この10年ほどで個人旅行をめぐる環境は大きく変わった。かつてはJTBやエイチ・アイ・エス(HIS)など旅行会社の店舗やパンフレット、新聞広告などを通じて、パッケージツアーや航空券を予約するのが主流だったが、今では旅行会社各社のウェブサイトで航空券やホテルといった単品を購入するように転換した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中