最新記事

ワークプレイス

シェアリングエコノミーで人をつなぐ、オランダ発のコワーキング

2016年2月12日(金)11時55分
WORKSIGHT

wsS2M-2.jpg

「テンションが生まれる空間」を目指し、拠点ごとにデザインを変えているのが特徴のコワーキングスペース。

wsS2M-3.jpg

青を基調としたオープンスペース。多くのワーカーがS2Mのシステムを活用し、つながりを生かしながら働いている。

 最後に、ユトレヒト駅舎に直結するS2Mの本部を訪ねた。デザインコンセプトは「テンションが生まれる空間」と共同オーナーのロナルド・ファン・デル・ホフは言う。内装にはさまざまな色や素材が用いられ、ミニマルとは正反対。また廊下をあえてカーブさせていたり、天井と床が並行でなかったり。どれも空間に緊張感を生み出し、思考を喚起するのが狙いだ。

自分が持つ社会資本をシェアすることが"S2Mの利用料"の代わりとなる

 どのロケーションにおいても、ユーザーはオンラインで予約するが、あわせて自分が持つ知識やスキル、専門分野を登録するよう求められる。

【参考記事】「クリエイティブ51、ビジネス49」をバランスさせる経営

 登録内容は各拠点に置かれた「セレンディピティ・マシーン」上に表示され、誰もが閲覧可能。そのときS2Mに集まっているユーザーが持つ社会資本を一目で確認できることになる。これが「無料」のコワーキングスペースを可能にした根幹のシステムだ。

「私なら、『アムステルダムで活動中、PRやイベントマネジャーができて......』などと登録してあります。それを見て、私に何か聞きたい、相談したいという人がやってくれば協力します。例えば、『イベントを企画しているが、いいケータリングの会社を知らないか』と聞かれたら、そこで教えてあげられる。つまり、私が持つ社会資本をシェアするわけですね。S2Mでは、これが支払いの代わりなんです。といっても、堅苦しいことは何もありません。他の人と普通に交流して、情報交換をしていれば大丈夫です」(ヨンカー氏)

 ヘルプデスクや営業、宣伝部門すら、セレンディピティ・マシーンが代行する。それが必要ならば、ネットワークでつながったユーザーが自発的にその役割を担うというから、コスト削減効果も大きい。しかし、コワーキングスペースが無料だというなら、S2Mのマネタイズはどこで行われるのだろうか。

 答えは、併設されたミーティングルームにある。使用座席数に応じて課金され、混雑する時間帯は料金が高くなる。他にも特徴的な課金方法がある。例えばアムステルダムの拠点では12時から14時まではランチが提供されるが、ここでも5ユーロかかる。

wsS2M-4.jpg

部屋ごとにテーマ性を持たせたミーティングルーム。赤い壁に描かれた文字「SOME LIKE IT HOT」は、マリリン・モンロー主演の映画『お熱いのがお好き』の原題だ。ブレストなど、刺激的で白熱する会議を求める時に適している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタン首都で自爆攻撃、12人死亡 裁判所前

ビジネス

独ZEW景気期待指数、11月は予想外に低下 現況は

ビジネス

グリーン英中銀委員、賃金減速を歓迎 来年の賃金交渉

ビジネス

中国の対欧輸出増、米関税より内需低迷が主因 ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中