最新記事

欧州債務危機

ユーロの運命を握ったイタリア人

大丈夫? 欧州中央銀行(ECB)の新総裁は放漫国家イタリアの中銀総裁だったこの人

2011年12月1日(木)13時01分
マイケル・ゴールドファーブ

名誉挽回 ベルルスコーニ前首相と違い実直な人柄で知られるドラギ Stefan Wermuth-Reuters

 欧州中央銀行(ECB)総裁なんて、昔は目立たない存在だった。それが昨今の世界金融危機で突如、スポットライトが当たるようになった。

 11月1日にECB総裁に就任するイタリア銀行総裁マリオ・ドラギは冷静で地味、私生活を見せない男だ。その彼をギリシャ救済にユーロ圏におけるインフレとデフレ回避、小口金融や市場の支払い能力の監督といった難題が待ち受けている。

「グローバル経済にとって過去70年で最も重要な時期だ」と、英ケント大学のヨーロッパ政治経済学者アドリアン・パブストは言う。「ドラギには大きな決断力と知恵、少しばかりの幸運が必要だ」

 ドラギはローマのサピエンツァ大学出身。ケンブリッジ大学、マサチューセッツ工科大学でも学び、ゴールドマン・サックスを経て80年代に世界銀行の専務理事に。プリンストン高等研究所やブルッキングズ研究所の理事も務めている。

 もっとも、ECB総裁就任の理由はこの経歴ではない。ECBは98年に設立されてからオランダ人とフランス人が総裁を務めてきた。次期総裁の最有力候補はドイツ連邦銀行のアクセル・ウェーバー総裁だったが、そのウェーバーが今年になって辞任。選択肢としてドラギだけが残された。

 この人選が不快なドイツ人もいるようだ。ドイツの大衆紙ビルトは、「スパゲティといえばトマトソース」のように「インフレとイタリア」はお似合いだとちゃかした。

 他方、ヨーロッパ外交評議会ローマ支部のシルビア・フランチェコンは、そうした反応は理解できるが、「傑出したイタリア人はスーパースターになれる。ドラギはそういった人物だ」と語る。「彼は客観的な視点を持つことができる。イタリア人というよりヨーロッパ人として、ヨーロッパを救うために働くだろう」

 ドラギは自己を律するタイプだ。ベルルスコーニ首相のようにパーティー三昧の生活とは無縁。フランチェコンによると趣味は「山登り」だという。「困難な状況に対処できる男だ」

 ヨーロッパの債務危機は世界的な問題だ。ドラギも今後の任期8年の仕事ぶりで自分の評価が決まることを理解していると、パブストは言う。「ユーロ崩壊を見届けた総裁として歴史に名を残したくはないはずだ」

GlobalPost.com特約

[2011年11月 2日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-米、ドンバス全域割譲を和平条件

ワールド

FRBの赤字額が昨年大幅縮小、利下げで支払金利負担

ビジネス

米国株式市場=反発、ダウ305ドル高 中東情勢の沈

ワールド

米政権、マスク氏のTSA職員給与支援の申し出拒否=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 2
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 3
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 4
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 5
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 8
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 9
    地上侵攻もありえる...イラン戦争が今後たどり得る「…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 9
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中