最新記事

グーグル

モトローラ買収は壮大な判断ミスか?

自前の携帯端末でiPhoneに対抗するグーグルに立ちはだかる利益相反と独禁法の壁

2011年8月16日(火)17時50分
トーマス・ムチャ

友人を裏切る行為? これまで多くのアンドロイド携帯を売ってきたサムスンも、これからはグーグルの競争相手になるのか(ジャカルタ) Beawiharta-Reuters

 グーグルの決断は確かに大胆ではある。

 8月15日、グーグルは米通信機器大手モトローラ・モビリティを125億ドルで買収すると発表した。自社のスマートフォン向けOS「アンドロイド」を搭載した携帯端末を製造するモトローラを傘下に収めることで、グーグルは自前の端末を手に入れ、アップルのiPhoneとの直接対決に乗り出すことになる。

 アンドロイドの売れ行きが絶好調であるという意味では、戦略的に理にかなった判断だろう。ガートナー・リサーチによれば、スマートフォン市場でアンドロイド搭載端末が占める割合は、今年の第2四半期には43・4%に達したという(1年前には17%だった)。
「モトローラ買収によって保有特許のレパートリーを強化できるため、競争を阻止しようとするマイクロソフトやアップルなどの脅威からアンドロイドを守り、競争を促進できる」と、ラリー・ペイジCEOはブログに書き込んだ。

 だが、グーグルの大胆な決断は本当に賢明といえるのだろうか。

 元ウォール街のアナリストで、経済ニュースサイト「ビジネス・インサイダー」の記者ヘンリー・ブロジェットは、この買収が悲惨な結果に終わる可能性を説得力のある言葉で論じている。


 この取引は、企業間に重大な利益相反を生む。携帯端末の製造はグーグルの中核ビジネスとはまったく異なるのに、グーグルは今後、韓国サムスン電子などこれまでアンドロイド端末を売ってきたパートナー企業と競合することになる。しかも、巨大企業のモトローラを買収すれば、グーグルの企業規模は6割増となる。しかもこの買収は前向きなものでさえなく、防御的なものだ。


■競争を阻害する買収ではないと主張するが

 さらに、独占禁止法がらみの問題もある。ニューヨーク・タイムズの金融ニュースサイト「ディールブック」は、その点を次のように論じている。


 この買収には間違いなく、独禁法違反の疑いがかけられるだろう。米連邦取引委員会(FTC)はすでに、複数の分野でグーグルの寡占状態を調査している。関係筋によれば、グーグルが買収を撤回した場合にはモトローラに違約金25億ドルを支払い、モトローラが撤回した場合にはグーグルに3億7500万ドルを支払う契約になっているという。

 グーグル陣営は15日の電話会議で、この買収は最終的にはスマートフォン市場の競争力を強化することになるとして、当局の承認を得られると自信をのぞかせた。

「この買収は競争を阻害しないと思う」と、同社の最高法務責任者デービッド・ドラモンドは言う。「グーグルはこれまで携帯端末を製造してこなかったから、これは水平統合にあたらない」。


GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物は3日続落、供給増の可能性を意識

ビジネス

「コメントしない」と片山財務相、高市政権の為替への

ビジネス

インド中銀は仮想通貨とステーブルコインに慎重姿勢=

ビジネス

全国コアCPI、10月は+3.0%に加速 自動車保
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中