最新記事

サッカー

なでしこ優勝で噴き出した非科学的な物語

勝利の物語があふれ出たが、本当の勝因は過剰な期待がなかったために伸びやかにプレーできたことだ

2011年7月27日(水)10時10分
森田浩之(ジャーナリスト)

頂点を極めて W杯を制したなでしこジャパンには物語の呪縛がなかった Kevin C. Cox-FIFA/Getty Images

 沢穂希の横顔のアップから番組が始まる。「なでしこジャパン」の愛称を持つサッカー日本女子代表がワールドカップ(W杯)を制した夜のニュース番組の冒頭だ。

「なでしこブルー」と金メダルの金色をあしらったという巨大な生け花が映る。「日本を誇らしく思った方も多かったのではないでしょうか」と、男性キャスターが口を開く。「神様は、決して諦めなかったなでしこジャパンにほほ笑みました」と、女性のスポーツキャスターが続ける。なでしこが優勝を決めたこの日の早朝から繰り返されてきた言葉だ。

 その後も番組では、朝から繰り返されてきた「物語」が語られる。なでしこたちがいかにして世界一になったかという物語。主将で今大会のMVPになった沢の歩みが語られ、勝利の陰にあった「家族の支え」が語られ、女性がサッカーを続けることの難しさが語られる。

 なでしこジャパンがW杯を制した後、メディアにはそんな物語が噴き出した。だがこのチームが勝てたのは、母親の支えがあったからでも、東日本大震災の被災者のビデオを見て団結したからでもない。...本文続く

──ここから先は7月27日発売の『ニューズウィーク日本版』 2011年8月3日号をご覧ください。
<デジタル版マガストアでのご購入はこちら
<デジタル版Fujisan.co.jpでのご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください

今週のカバー特集は「勝利と成功の科学」です。
「テクニックを95%発揮しても頭脳を50%しか使わなければ負け続ける」──アンドレ・アガシを勝者に変えた秘策の意味は? スポーツからビジネスまで、最新研究が解き明かす「勝者の思考法」に迫ります。
■サイエンス 成功をつかむ勝利の科学
■弾丸サーブを打ち返す「勝つ脳」の仕組み
■ウェルチ夫妻流、勝利のリーダー術 ほか

他にも
■マードック帝国、ついにメルトダウン!
■ウェンディ夫人、平手打ちの真実
■ホロコーストのもう一つの悲劇 など
<最新号の目次はこちら

[2011年8月 3日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、中期貸出制度を修正 政策金利の役割さら

ワールド

米ロ、黒海穀物協定再開について協議へ=ロシア報道官

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、3月は7か月ぶり高水準 製造業

ワールド

ロ報道官、エネ施設攻撃の一時停止は継続と説明 「状
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 2
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    インド株から中国株へ、「外国人投資家」の急速なシ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 4
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中