最新記事

アップル

iPad2が未来を連れてくる【前編】

劇的変更がないのは、アップルがiPadを未来型コンピューティングの先駆けと位置づけている証拠だ

2011年3月3日(木)16時17分
ファハド・マンジュー

サプライズ 病気療養中のジョブズが表れた驚きが一番大きかった Beck Diefenbach-Reuters

 アップルが今日、サンフランシスコでiPad2を発表した。舞台に立ったCEOのスティーブ・ジョブズらは、「ポストPC」という言葉を10回以上も使ったのではないかと思う。彼らの野望が伺える言葉だ。アップルにとってiPadは、単に次の稼ぎ頭というだけの存在ではない。アップルが思い描く未来型コンピューティングの第1弾なのだ。

 すべてのパソコンがタブレット型端末になるわけでも、デスクトップやノートパソコンが絶滅するわけでもない。だが長期的にはタブレット機の市場シェアが増すのは間違いないし、より重要なのは、今のデスクトップやノートパソコンもよりiPad的な機能を果たすようになるということだ。つまり、使い方やメンテナンスが簡単で、今以上に生活のさまざまな場面で使われるようになる。

 iPad2は、アップルがこうしたコンピューターの未来像を実現する足がかりとなる。会見で、iPadの販売台数が昨年の発売開始から1500万台に達したと発表したということは、さらに大きな野望の一端を示している。

大きく変えないのが作戦

 新型iPadを20分ほど使ってみたが、たしかにアップルはこの野望を叶えそてしまいそうだ。私はアップルがタブレット市場の主導権を守るためには、iPad2を従来型から大きく変えない方がいいと考えていたが、アップルも同じ考えだったようだ。

 アメリカでは3月11日(日本では25日)に出荷が始まる新型iPadは、いくつかの重要な部分が多少改善されている程度で、従来型とそれほど大きくは違わない。特徴は、処理速度が上がったこととカメラを2つ内蔵していること、そしてより軽くて薄いデザインだ。色も黒と白の2色から選べるようになった。

 価格について言えば、安さを望んでいた人々には残念だが新型も初代iPadと同じ価格構成となっている。最も安いモデルで499ドル、最も高いモデルが829ドルだ。ちなみに現在、旧型は399ドルで買える。

立てかけて使える工夫も

 iPad2のデザインについてジョブズは、従来型とは「劇的に違う」と語ったが、見ただけではそれはわからない。だが実際に手に取ると、iPad2は確かに新しい。薄さは従来の13.4ミリから8.8ミリへ3割減となり、重さも80グラム軽量化された。それほど違うとは思えないかもしれないが、これまでのように重過ぎると感じることはもうなくなった。

 デザイン面での最も印象的な変更点はiPad本体ではなく、アップルがデザインした「スマートカバー」だ。この折りたたみ式のカバーは皮製が69ドル、ポリウレタン製が39ドルで、内蔵された磁石によってiPad本体に張り付く仕組みだ。

 カバーを三角形に折りたためば本体に傾斜をつけて置くことが可能となり、スクリーン操作がしやすくなる。さらに映像を見たりビデオチャットをするのに便利なよう、本体を立てて使うことも可能になった。初代iPadユーザーの悩みは、このカバーが解決してくれるだろう。旧型には使えないのが残念だが......続く

© 2011 WashingtonPost.Newsweek Interactive Co. LLC (Distributed by The New York Times Syndicate)

<後編はこちら

─3月2日発売の本誌2011年3月9日号(カバー特集は「リビア暴君の最期」)に掲載の
■「タブレットPC戦争、iPad2も圧勝か」
も併せてどうぞ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「米国の和平案推し進める用意」、 欧

ビジネス

米CB消費者信頼感、11月は88.7に低下 雇用や

ワールド

ウクライナ首都に無人機・ミサイル攻撃、7人死亡 エ

ビジネス

米ベスト・バイ、通期予想を上方修正 年末商戦堅調で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中