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中東経済

ドバイ、金ピカ国家の宴が終わるとき

2009年11月30日(月)12時13分
クリストファー・ディッキー(中東総局長)

 ただし詳細は未開示なので、アラバーの楽観論をどこまで信用していいのかは判断しづらい。「重要なのは、ドバイの資産と債務の数字ではなく、現状を打開するための手を打っているかどうかだ」と、シティグループのアナリスト、ムシュタク・カーンは言う。

 明るい材料があるとすれば、ドバイの指導者たちが危機の比較的早い段階で対策を講じたことだろう。中央銀行は08年の9月と10月に、327億ドル規模の金融機関支援策を実施した。

 アラバーは11月末、資金難に陥った大手住宅金融会社2社の事実上の国有化を発表。3大不動産開発業者が協力して、不動産市場の安定化に努めることも約束した。現在の状況は「健全な調整局面」だと、アラバーは述べた。
 
 そういう側面がないわけではない。ドバイの住人の多くはあまりに急激な変化に戸惑い、立ち止まって一息つく時間が欲しいと感じている。なにしろ20年前にはだだっ広い砂漠だった場所に、今や高層ビルが林立しているのだ。

 しかし、ドバイがその「小休止」の時間を無傷で切り抜けられるとは考えにくい。ドバイの成長の原動力になってきたオイルマネーを供給し、発展を横目で見続けてきた隣人アブダビは、このチャンスに自分たちの取り分を増やしたいと考えているようだ。「正式な発表はないだろうが、アブダビが思惑を胸にドバイを支援する可能性は高い」と、シティグループのカーンは言う。

相場崩壊で別荘投げ売り

 カネを出せば当然、口も出す。アブダビが主導権を握るUAE連邦政府は最近、憲法の規定を改定した。連邦政府の首相とその側近、閣僚が営利目的の職に就いたり、連邦政府・地方政府と商取引を行ったりすることを禁止する条項を盛り込んだ。こうした措置に乗り出したのは、UAEの首相職にあるのがドバイのムハンマド・ビン・ラーシド・アル・マクトゥーム首長だからだ。

 首長一族はいわばドバイという国のオーナー。「ドバイ=ムハンマド首長」と言っても過言でなく、この新しい規定にどの程度の実効性があるかは疑問だ。だが、メッセージは見落としようがない。今後はアブダビが仕切らせてもらうぞ、というわけだ。

 一方、経済危機が生み出した亀裂は広がり続けている。南アフリカの開発業者と共同でアトランティスの開発を手がけたドバイの有力不動産会社ナキールは、盛大なオープニングセレモニーの後、程なくして500人の解雇を発表した。同社の全世界の従業員の15%に相当する人数だ。

「ナキールは花火に2000万ドルものカネを使っておいて、社員に給料を払えないという」と、ドバイに多額の投資を行っているレバノンのある実業家は言う。「あまりにひどい話だ」

 肩で風を切っていたはずの富裕層も尻に火がつきはじめた。アトランティスを対岸に臨む人工島の海辺に地中海風の別荘を所有する人物が最近、その別荘を売りに出すことにした。売却希望額は490万ドルから始まって、360万ドル、313万ドルと引き下げられた。それでも売れないのでオーナー所有の高級車ベントレーをおまけにつけることにしたが、まだ買い手がつかない。
 
「所有者は金融市場に投資してにっちもさっちもいかなくなり、事業を継続するために金策に追われている」のだと、不動産仲介業者のアンソニー・ジェリッシュは説明する。「とりあえずベントレーだけ別に売ってカネをつくるしかないかもしれない。いったいどうしたものか」

 ほんの少し前までドバイは、このような途方に暮れた声とは無縁の土地だったはずなのだが。 

[2009年1月21日号掲載]

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