コラム

「驕る習近平は久しからず」中国コワモテ外交の末路

2020年10月01日(木)17時37分

いつの間にか「地球で最も孤立した国」に

習氏が中国共産党総書記に就任して政権がスタートしたのは2012年11月。その1カ月後の12月に第2次安倍政権が成立したが、その後の数年間、習政権は安倍政権に対して「傲慢なる無視」の態度を取り続けた。

この原稿の冒頭で、第一次安倍政権誕生の時、あるいは民主党の野田佳彦内閣が誕生した時に中国は温家宝首相が祝電を送ってきたと述べたが、実は安倍氏が首相として再登板した時は首相の祝電すらなかった。この年に日本政府による尖閣諸島の国有化が原因で両国関係が冷え込んでいたとはいえ、最低限の外交儀礼すら無視した態度だ。

2013年3月に国家主席に就任してから、習氏は「主席外交」を積極的に推進し、欧米諸国はもとよりアジアの主要国をほぼ訪問したが、主席として日本を訪問したことは一度もない。そして習政権2期目の2018年10月になるまで、安倍首相を中国訪問に招かなかった。

習主席が安倍首相と初めて会談したのは2014年11月、彼自身が主席になって1年半以上も経ってからのことである。しかもそれは、安倍首相が北京開催のAPEC会議に出席したから実現できた会談だ。習主席はホスト国の元首として各国首脳全員と個別会談したのであり、日本の安倍首相だけに会わないことは流石にできなかった。

習主席は「やむを得ないから会ってやる」という風情で安倍首相との会談に臨んだが、冒頭の握手から終始一度も笑顔を見せなかった。さらに中国側が設定した会場では、各国首脳との会談の時には両国の国旗が左右に掲げられているのに、安倍首相との時だけは国旗が飾られなかった。

当時の習政権はなぜ、日本と日本の安倍政権に対してそこまで傲慢かつ高慢な態度に出たのか。その最大の理由は、当時の習主席の眼中には日本という国の存在がなかったからではないか。

国家主席になってからまもなくの2013年6月、習氏はアメリカを訪問し、当時のオバマ大統領と2日間にわたって膝詰め会談を行った。その中では習主席は「新型の大国関係の構築」をアメリカ側に提案し、米中両大国の連携で世界をリードしていく意気込みを示した。

その後、習主席はアメリカとの「新型の大国関係」を基軸にしつつ、中国自身が言うところの「大国外交」を積極的に展開し、日本以外の世界の主要国を歴訪して「世界的指導者」たることを演出し続けた。こうした中では習主席は、「一帯一路」という途方もない構想を打ち出して、多くの参加国を束ねてユーアシア大陸とアフリカ大陸を席巻するような世界規模の投資プロジェックトを展開していった。

この時の習主席の眼中には、超大国アメリカやこの地球という惑星のことはあっても、「日本ごとき」の存在はまるきりなかった。中国の独裁者となった時にはすでに地球を俯瞰する目線となっていたのだ。

プロフィール

石平

(せき・へい)
評論家。1962年、中国・四川省生まれ。北京大学哲学科卒。88年に留学のため来日後、天安門事件が発生。神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。07年末に日本国籍取得。『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞受賞。主に中国政治・経済や日本外交について論じている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン首都照準に2日目攻撃、トランプ氏は反撃に警告

ワールド

中東で航空の混乱深まる、数千便に影響 主要空港閉鎖

ワールド

イランが湾岸諸国に報復攻撃、民間インフラも対象 複

ワールド

OPECプラス、増産拡大検討へ イラン攻撃で石油輸
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 2
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 3
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 4
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKI…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「一人旅が危険な国」ランキン…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 8
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 9
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 10
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story