コラム

2013年から続くトランプの一途な「プーチン愛」、侵攻も「不動産屋」目線で絶賛(パックン)

2022年03月08日(火)18時30分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
プーチンとトランプ

©2022 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<プーチンのウクライナ侵攻を「天才」「賢い」とたたえるトランプは、「メキシコとの国境に使えそう」とまで発言している>

ドナルド・トランプ前米大統領は、長すぎるネクタイと同じぐらい専制主義の指導者が大好物のようだ。ハンガリーのオルバン、トルコのエルドアン、フィリピンのドゥテルテ、エジプトのシシ、中国の習近平など国際社会の「反社」をたたえ、「タフでヤバイ奴ほど、俺は打ち解ける」と、独裁者と意気投合することを率直に明かす。北朝鮮の金正恩とは「恋に落ちた」とまで話している。あぁん♡。

「好きな人」がたくさんいるなか、トランプの本命はやはりロシアのプーチン大統領だろう。2013年に「僕の親友になってくれるかな?」とラブコールを送ってから繰り返し「賢い」「強い」「優しい」「尊敬する」「評価するべき」「娘じゃなければ恋人にする」などと好意を示している。おっとすみません、最後のは長女イバンカに関する発言だった。失敬!

人となりだけでなく、プーチンの行動も好きなようだ。ロシアがクリミア半島を併合すると「責任を引き受けて素晴らしい仕事をしている」と発言。15年には、ロシアでジャーナリストが次々と殺されていることについて「少なくとも彼はリーダーとして国家を運営している。だがアメリカにはリーダーがいない」と述べた。17年にロシア駐在の米外交官が追放されると「人件費の節約をしたかったから、ありがたい」と、悪行でも絶賛だ。

そんなプーチンにベタぼれのトランプでも、最近の発言にはびっくりだ。なんとロシア軍をウクライナに攻め込ませたプーチンを「天才!」「なんて賢いんだ」とたたえた。そして「広々とした場所、素晴らしい土地と大勢の住民をゲットするだろう」と、不動産屋目線で侵略を評価した。確かに、ウクライナは敷地面積も広いし、立地条件もいいし、入居率も高い。だが、投資物件ではなく主権国家ですよ、ドナルド!

さらに怖いことに「平和維持軍」は「こちらでもメキシコとの国境に使えそうだ」とも言っている。どうやら、チャンスがあればプーチンの手段をアメリカにも導入したい様子だ。

男同士の同性愛は普通でも、独裁愛はさすがに許容できない。それでも、トランプが正しいときもある。アメリカは「バカな国だ」という最近の発言も事実だろう。大統領になれたトランプはその生き証人だし。

ポイント

WHAT DO YOU CALL A PARANOID MEGALOMANIAC BENT ON STARTING WWIII?
第3次世界大戦を勃発させようとしている誇大妄想狂をなんと呼ぶ?

GENIUS!
天才!

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、緩和的金融政策を維持へ 経済リスクに対

ワールド

パキスタン首都で自爆攻撃、12人死亡 北西部の軍学

ビジネス

独ZEW景気期待指数、11月は予想外に低下 現況は

ビジネス

グリーン英中銀委員、賃金減速を歓迎 来年の賃金交渉
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 6
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story