コラム

大統領選の「トランプ爆弾」不発に民主党はがっかり(パックン)

2020年11月20日(金)18時00分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

The Greatest Damp Squib / (c) 2020 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<大統領の座と同時に議会上下両院を制して権力を固める......民主党が目指していたのはそんな「トリプルブルー」だったが、トランプ支持は驚くほどしぶとかった>

トランプを大砲に突っ込み、大きな爆音で地平線の先まで飛ばす。そんなイメージで大統領選挙に臨んだ民主党だった。世論調査では10ポイント近くの大差で共和党を突き放していたし、民主党への大きな波を期待していた。もちろん、この「ブルーウェーブ」のスターといったら(いや、イチローではなく)ジョー・バイデン候補だ。

バイデン人気とトランプ不人気を足せば変化の力はすさまじいはず。大統領の座と同時に議会上下両院を制して権力を固める。そんな「トリプルブルー」を目指していたが......ふたを開けてみると、トランプ支持が驚くほどしぶとかった。

バイデンに入った約7800万票は史上最多の得票数だ。でも、トランプが得た7200万以上もの票は史上2番目! オバマやレーガン大統領をも超えている。しかも共和党は上院で過半数を守りそうな上、下院でも議席数を伸ばしている。ブルーウェーブも、その後のトリプルブルーもない。一方日本のブルーウェーブはバファローズになった。今年も最下位だけどね。

Massive Trump rebuke(大規模なトランプ否定)を楽しみにしていたDems(=Democrats・民主党員)はまさに、Awww...Come on!(うっそ......ふざけないでよ!)と思っている。選挙直前は1日に50回、就任してから2万5000回以上真実と異なる発言をしている「ウソつき大統領」でも飛ばせない? 経験も専門知識もない家族を政権の重要ポストに就けたり、公金を自社のホテルに回したりする「縁故主義・公私混同大統領」でも飛ばせない?

有罪判決を受けた盟友の刑の執行を免除したりする一方、自分を捜査中のFBI長官を解任・交代させたり、自分に対する内部告発者を脅したり、自分に不利な証言をした国防省職員(とおまけにその職員の兄弟も)を解雇したりする「司法省私物化大統領」でも飛ばせない?

脱税、性的暴力、資金洗浄などの疑惑が持たれたり、特別調査で司法妨害を指摘されたり、選挙法違反で有罪判決を受けた側近の裁判の書類に共犯者として記されたり、慈善財団の資金流用や開設した学校の詐欺的商法で罰金や和解金の支払いを命じられたり、職権乱用や議会妨害で弾劾訴追されたりするような「クリミナル大統領」でも飛ばせない?

こんな思いで、多くの民主党員はがっかりしている。どう見ても飛んでもいい人が飛ばせない? 飛んでもないね~。

【ポイント】
ARE WE DONE YET?
(発射は)まだなの?

<2020年11月24日号掲載>

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ」が物議...SNSで賛否続出
  • 4
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 8
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 9
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 10
    高市首相の「台湾有事」発言、経済への本当の影響度.…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story