コラム

「トランプ」が民主党の勝因。そして共和党に2人の新星が登場した

2022年11月18日(金)06時30分
バイデン、オバマ、ジョン・フェッターマン

選挙運動中のバイデン(右)とオバマ(中央)、フェッターマン(11月5日) KEVIN LAMARQUE-REUTERS

<米中間選挙は、紛れもない民主党の大勝利となった。「赤い波」が起きなかった理由は3つあり、選挙を通して、2024年大統領選を考える上で重要なことが4つ見えてきた>

政治とは、事前の予測が重要な意味を持つ世界だ。予測を上回ると勝利が誇張され、下回ると崩壊を嘆く声が大きくなる。

今年の米中間選挙は、まさにその好例だった。

米政治は現在の民主党の完全支配から行政府と議会のねじれへと転換。共和党の下院支配でバイデン大統領の各種の法制化の野望は完全に打ち砕かれ、今後はバイデン自身への追及はもちろん場合によっては弾劾につながる可能性もある。

にもかかわらず、この選挙は紛れもない民主党の大勝利だ。

南北戦争以来、現職大統領の与党は39回の中間選挙のうち下院は36回負けている。しかも、大半は大差での惨敗だ。

大統領の支持率が50%を下回ると、野党は下院で平均46議席増やしている。再選を果たした2人の民主党大統領(クリントンとオバマ)は、最初の中間選挙で60議席前後減らした。2024年大統領選でバイデンと再び対決する可能性があるトランプ前大統領は中間選挙で40議席を失った。

だがバイデンと民主党は予測を大きく上回り、従来の常識を覆して無党派層の支持を獲得した(CNNの出口調査で49%対47%)。

バイデンは「逆境に打ち勝った」と誇ってみせたが、この結果はバイデンと民主党への信任というより、共和党への非難の色合いが強そうだ。

出口調査の結果、民主党は中道派の有権者の間で15ポイントもの圧倒的差をつけた。この数字や各種調査から、共和党に過大な権力を持たせることを恐れる民意がうかがえる。

歴史的傾向と識者の予測どおりに「赤い波(共和党の大躍進)」が起きなかった主な理由は3つある。トランプの不人気、共和党に魅力的な政策や問題解決策が欠けていたこと、そして候補者の質の低さだ。

まず、バイデンの支持率は低迷しているが、出口調査によればトランプよりは少しだけ高い。

その意味でトランプが投票日の直前、2024年大統領選出馬を明らかに示唆する「重大発表」を予告したことは、民主党にとってかなりの追い風になった。

脚光を浴びたくて仕方がないトランプの大々的な再登場は、多くの無党派層にとって悪夢であり、今も共和党を支配しているのはトランプであることを再認識させるものだった。

一方、民主党は選挙戦の終盤になって、今も人気のあるオバマを前面に出したことが功を奏した。オバマは熱い言葉で選挙への参加を訴え、共和党の愚行を舌鋒鋭く攻撃した。

政治は対比と選択肢が大きくものをいう世界でもある。トランプはいまだに最も人気のない選択肢のままであり、その存在感の大きさが共和党の足を引っ張った。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア大統領府、米ロ首脳会談の日程は未定 「準備が

ワールド

米政府閉鎖、国民は共和党を非難 トランプ氏支持率は

ワールド

台湾輸出受注、9月は前年比30%増 AI需要好調で

ワールド

ユーロ圏の銀行、ドル調達難で融資抑制のリスク=レー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 6
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story