コラム

組織心理学の若き権威、アダム・グラントに聞く「成功」の知恵

2022年06月11日(土)13時26分

NW_INT_04.jpg

カルロス・ゴーンの逃走劇では彼の行為の「全てが悪い」かどうかではなく白黒の間にある曖昧さに注目する TAKASHI AOYAMA/GETTY IMAGES

ポトリッキオ 『THINK AGAIN』で、あなたは曖昧さの重要性に繰り返し言及している。白か黒か、二元的な議論を避ける手段としての曖昧さを、どのように理解すればいいだろうか。

グラント 率直に言って、このスキルは日本の文化のほうが、西洋の文化よりはるかに適している。東アジアの大半の地域では、善には悪が伴うという陰陽的な世界観が主流だ。そうした文化は、周囲の状況に常に敏感でもある。

現代の二極化した社会で意見が対立するのは、多くの場合、自分の考えとその反対という両極端な見方しかできないからだ。私とあなたの間が離れるほど、あなたの視点が実は合理的な視点かもしれないと理解することが難しくなる。

このような状況で、意見が対立している問題をコインの裏表と考えるのではなく、1つのプリズムレンズのさまざまな角度から見ていると考えたいのだ。

例えば、日本でも話題になったカルロス・ゴーンの大胆な逃亡劇。彼は正しいことをしたのか、それとも間違ったことをしたのか。この二者択一しかないように見えるが、人々の意見は大きく分かれている。ここで曖昧さに注目すると、この状況は、実は複数の層になっている。

第1に、最初に問題となった彼の行為はどの程度、間違っていたのか。そもそも彼は何か悪いことをしたのか。第2に、日本の司法制度はどの程度、公正なのか。第3に、彼の逃亡は私たちの信じる倫理にかなうものだったのか。これらを全て分析した上で、彼の全ての行為が「間違っている」かどうかではなく、ある行為は間違っているが、別の行為は正しいかもしれないと考えることもできる。

ポトリッキオ あなたと話していてわくわくするのは、その飽くなき好奇心、つまり常に学び続けている姿勢だ。私が参加している米国務省のグループで、あなたがスピーチをしたときのことを覚えている。あなたは本当に真摯で、自分がより良くなること、自分を高めることを何よりも考えている。発想を転換して、社会的、文化的レベルで考えるためには、どのような環境が必要だろうか。社会や国、政治体制、宗教などに、何か人々に再考を促すような特徴があるのか。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド26年度予算案、財政健全化の鈍化示す フィッ

ビジネス

ウォーシュ氏のFRB資産圧縮論、利下げ志向と両立せ

ワールド

米特使、イスラエルでネタニヤフ首相と会談へ=イスラ

ワールド

シンガポール、宇宙機関を設立へ 世界的な投資急増に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 6
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 7
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 8
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 9
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story