コラム

組織心理学の若き権威、アダム・グラントに聞く「成功」の知恵

2022年06月11日(土)13時26分

NW_INT_03.jpg

戦時下では、人はいつも以上に「牧師・検察官・政治家の思考モード」になりがち FERNANDO GUTIERREZ-JUAREZーPICTURE ALLIANCE/GETTY IMAGES

ポトリッキオ あなたは今は戦時で、人はいつも以上に牧師・検察官・政治家の思考モードになりがちだと言う。そうならないためにはどうすればいいのか。不確実性が増すなかで科学者の思考モードを身に付けるための知恵を具体的に教えてほしい。(編集部注:「信念がぐらついている時は牧師の思考モードになり、理想を守り確固としたものにするために説教する。他者の推論に矛盾を感じれば検察官の思考モードに切り替わり、相手の間違いを明らかにするために論拠を並べる。多くの人を味方につけたい時は政治家モードになり、支持層の是認を獲得するためにキャンペーンやロビー活動を行なう――『THINK AGAIN』より)

グラント こんなときだからこそ、本を書きたくなる。ブックツアーが終わると、自分が書きたかったことがはっきり見えてくるものだ。牧師・検察官・政治家の思考モードから抜け出して科学者モードになるために、3つのアドバイスをしたい。

第1に、自分の意見は全て、検証されることを待っている仮説である。意見は直感にすぎない。それが科学者の考え方だ。

第2に、あなたが下す全ての決断は、(対照実験の)コントロールグループを設定し忘れた実験である。(複数の選択肢を試して比較する)ABテストを行ったつもりだが、実際はAしか検討していない。誰かが「1番のドアを通る!」と言うと、2番と3番のドアも試したかどうかを私は知りたくなる。決断を実験のように捉えれば、「あれは試験的なもので、自分が望んでいた結果と違うから、最初に戻って別の条件で考えてみよう」と切り替えやすくなる。

第3のアドバイスは、頭を切り替える条件をあらかじめ決めておくことだ。例えば、あなたに新しい仕事のオファーが来て、今の会社を辞めるかどうか迷っているとしよう。今の仕事はとても良いが、新しい仕事はそれより良いかもしれないと、あなたは考えている。

それは仮説であって、検証するためにもっと情報を集めなければならない。その上で決断を下すわけだが、決断は実験だ。例えば、試用期間があるかもしれない。そして、どんなことが起きたときに、あなたは新しい仕事を選ぼうと確信するのか。どんなことが起きたときに、間違った決断だから考え直そうと思うのか。

これらの条件を前もって決めておけば、引き金となる出来事が起きたときに、それが自分の決断した理由だと気付くか、あるいは、今回の選択を最初から見つめ直さなければならないと気付く。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド26年度予算案、財政健全化の鈍化示す フィッ

ビジネス

ウォーシュ氏のFRB資産圧縮論、利下げ志向と両立せ

ワールド

米特使、イスラエルでネタニヤフ首相と会談へ=イスラ

ワールド

シンガポール、宇宙機関を設立へ 世界的な投資急増に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 6
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 7
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 8
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 9
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 10
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story