コラム

【2020米大統領選】バイデンの「1期だけ」作戦は意外な好手

2019年12月25日(水)17時45分

バイデンが大統領になれば任期中に80歳を超えるが STEVE MARCUS-REUTERS

<大統領選でバイデンが勝てば就任時には78歳。1期4年間という職務期間はトランプ政権を断ち切り、有権者の不安を軽減させることもできる理にかなった選択かもしれない>

アメリカの大統領は、2期目の中間選挙が終わると「レームダック(死に体)」と呼ばれるようになる。残り任期が2年を切ると、3選を禁じた憲法の規定もあり、役人や有力政治家に対する影響力が低下するからだ。

そのため民主党の大統領候補指名レースで先頭を走るジョー・バイデン前副大統領が、大統領に当選しても1期のみで退任する意向を示唆したと伝わると、驚きの声が上がった。1期での退任が決まっていれば、もっと早くレームダック化する可能性がある。本人は取材に対し、「まだ1期目の選挙に勝ってもいない。今はそれに集中する」と語り、曖昧な態度を取っている。

バイデンは全米規模の世論調査でかなりのリードを保って民主党の候補者指名争いでトップの座を守り、現職のトランプ大統領との一対一の対決でも、大半の調査で優位に立っている。だが、これまでの選挙パフォーマンスはひどいものだった。

候補者討論会では口ごもったり言い負けたりする場面が目立ち、過去7回の討論会で「勝者」と認定されたことは1度もない。記者の簡単な質問にも、まともに答えられないことが多い。選挙対策チームは失態を恐れ、遊説の回数を大幅に減らした。

選挙戦の構図を変える可能性も

バイデンが大統領選に勝てば、2021年1月の就任時点で78歳。アメリカ人の平均寿命とほぼ同じ年齢だ。普通に考えれば、世界で最も過酷な職務をこなせるとは思えない。その点で「1期だけ」を宣言すれば、不安の一部を軽減する効果はあるかもしれない。

「1期だけ」作戦に意味があると思える理由はほかにも2つある。まず、穏健派のバイデンは大胆な改革を唱えていない。やりたいことをやるのに2期8年は必要ないかもしれない。

バイデンのやりたいこと──それは信頼できる世界のリーダーとしてのアメリカの評判を回復させることだ。本来なら、前回の2016年大統領選こそバイデンにとってチャンスだったが、立候補を見送った。ということは、今回の立候補は純粋な愛国心の発露と言ってもいいかもしれない。

自分がトランプとの直接対決に勝てる可能性が最も高い候補者であることを、バイデンは知っている。だからこそ、2期8年のトランプ政権という悪夢からアメリカを救うために参戦したというわけだ。もし共和党の現職大統領がまともな人物だったら、おそらく出馬しなかったのではないか。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IMF経済見通し、24年世界成長率3.2% 中東情

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック続落、金利の道筋見

ビジネス

NY外為市場=ドルが対円・ユーロで上昇、FRB議長

ビジネス

制約的政策、当面維持も インフレ低下確信に時間要=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 6

    【地図】【戦況解説】ウクライナ防衛の背骨を成し、…

  • 7

    訪中のショルツ独首相が語った「中国車への注文」

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    「アイアンドーム」では足りなかった。イスラエルの…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    猫がニシキヘビに「食べられかけている」悪夢の光景.…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story