コラム

クールジャパン戦略は破綻したのか

2025年09月24日(水)15時15分

つまり、クールジャパンというキャンペーンの結果、旺盛な購買力を持つ海外の消費者に、「日本文化の素晴らしさがバレてしまった」ことにより、肝心の日本の消費者が「買い負けている」のです。しかも日本文化の根幹であるコメにおいて、「買い負け」が起きて、日本人が廉価な輸入米を食べて、高価なブランド米が輸出に回っている、これは完全に国策の破綻だと思います。コメに続いて、例えば日本酒などにもこのような現象が及ぶ可能性があります。

この「買い負け」というのは、モノだけではありません。ソフトやコンテンツでも同様です。最高の役者とスタッフを揃えた時代劇ドラマ、日本代表が威信をかけて戦う野球の国際選手権の「日本国内の」放映権などが、海外資本に奪われているというのは、何かが大きく間違っているのです。


間違っているのは何か、何と言ってもそれは円安であり、その背景にある財政悪化と国内GDPの余りにも長期にわたる低迷です。クールジャパンについて言えば、そのような経済低迷を脱するための産業の一つとして推進してきた面はあります。ですが、当初想定していたような、日本人が日本文化を今まで通りに享受しつつ、プラスアルファで、そこに海外の需要が上乗せされるという段階を、今は過ぎてしまったのです。

見方を変えれば、クールジャパン戦略の結果、潤うのは一部の産業だけで、その他の消費者に取っては「自分の国の消費文化が高値となって自分が排除される」という状況になりつつあるのです。現在の日本における、現状への違和感の大きな部分はこの問題が象徴していると思います。何故このような袋小路に追い詰められたのか、政治家だけでなく、財界も含めた猛省が必要だと思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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