コラム

「外国免許切替」制度の厳格化は必要、だが事故防止はまた別の問題

2025年05月21日(水)14時40分

日本の標識や左側通行に慣れていない外国人ドライバーの事故が増えている bobtheskater/pixabay

<外国人観光客などがレンタカーを利用する際に使うのは多くが「国際免許証」>

日本に一時的に滞在している外国人が、ホテルの住所等を申告することで、簡単に日本の免許証に切り替えができてしまう、いわゆる「外免(外国免許)切り替え」が問題になっています。これは大変深刻な問題です。運転免許証というのは政府が発行する写真付きのID(身分証明書)であり、国によっては本人を特定する場合にかなり強い法的な効力を持ちます。

それが国籍もなく、定住もしていない人物に安易に発行されるようでは、国際社会での日本の免許証の信用が下がってしまいます。ですから、改善は一刻を争うと思います。ただ、制度改正にあたっては、留学や駐在などで一時的に外国に居住している日本人が、既に取得している免許証を更新する場合まで厳格化するようなものでは困ります。


では、外免切り替えを厳格化すれば、外国人の事故は減らせるのかというと、これは全くの別問題だと思います。観光客など一時滞在の外国人が、レンタカーを借りた場合の交通事故は増えており、深刻な状況ですが、その多くは「外免切り替え」ではなく「国際免許証」での運転だからです。

ちなみに、国際免許証での運転を厳格化すると、これはジュネーブ条約に反することとなり、報復措置として海外で日本の国際免許証の効力を削がれたりしますので、事実上不可能です。

「止まれ」の標識を認識できない外国人ドライバーも

外国人観光客の起こす事故は、「出会い頭の衝突」「右折時の衝突」「逆走」が多いとされています。まず「出会い頭の衝突」ですが、多くの場合は信号のない交差点で起きています。原因はほぼ特定できると思います。それは日本の「止まれ」の標識を認識しない外国人ドライバーが多いということです。

まず「止まれ」とい表示が日本語だけという問題があり、また形状が問題です。日本人にとっては逆三角形の標識はおなじみですが、諸外国では三角形ではなく八角形のものが採用されていることが多いので、瞬時には一時停止標識だと認識してもらえません。それどころか、欧州などでは赤枠の逆三角形は別の意味(ゆずれ、など走行して良い)になっています。

欧米だけでなく、アジアでも「止まれ」は八角形の国が多く、韓国でも中国でもそうです。ですから、信号のない交差点で優先権のない側に「止まれ」の標識があっても、理解されずに進入して事故になるわけです。ちなみに、警察庁もこの点は留意しており、近年は「止まれ」の下に英語で「STOP」という表示をつけた標識も増えてきました。

ただ、形状の問題は重要だと思います。一気に八角形にすると、今度は日本人が困惑するので、例えば現行の止まれ標識の「止まれ」の下に入れる「STOP」という表示を八角形の枠で囲むなどの処理を強く提案したいと思います。あるいは、現行の標識の下に、少し小さめでも良いので、もう一つ八角形の「STOP」をつける対策も考えられるでしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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