「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファスティングの科学」とは?

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<断食は苦行ではなく、今や科学に。飽食社会に挑む科学的アプローチについて>
肥満、糖尿病、慢性炎症...。これらの現代病の背景には、単なる食習慣の乱れではなく、「常に食べ続ける」という文化的・社会的な構造がある。
カナダの腎臓内科医であるジェイソン・ファンは、著書『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』(CEメディアハウス)で、こういった構造そのものを問い直している。
ファンが提示する解決策は、薬や手術などを含む医療ではない。「食べないこと」──つまり、ファスティング(断食)だ。極めて原始的でありつつも、同時に現代的なこの手法は、過剰に複雑化し過ぎた医療や健康食品をはじめとした業界への静かな反論でもある。
医療が見落としてきた「空腹」の力
「医師たちは『何を食べるべきか』には敏感だが、『食べないこと』について語ることはなかった」
ファンのこの言葉は、現代医療の穴を突いている。肥満や2型糖尿病の本質を「インスリン抵抗性の慢性的な悪化」であるとして断食、つまりファスティングによって、この悪循環と連鎖を断ち切ることができると説明する。
その背景は、医学論文に基づいた生理学的なメカニズムと、自身のクリニックでの豊富な臨床例に裏付けられている。