コラム

急速に勢いを失いつつあるトランプ、大統領選の潮目は変わったのか?

2020年06月30日(火)16時15分

「経済活動再開」を優先してきたトランプのコロナ対策は破綻した Carlos Barria-REUTERS

<南部の保守的な州でコロナ対策が破綻したことや、ロシアの反米活動がリークされたことなどで、ただでさえ低下していたトランプの権威はさらに綻びを見せている>

このところ、大統領選におけるトランプとバイデンの直接対決は、あまり盛り上がってはいませんでした。アメリカ全体として、コロナ危機やBLM運動が何と言ってもトップニュースだったこともありますが、両者の勢いが漠然と膠着状態だったということも言えると思います。

トランプ大統領はコア支持層向けの威勢のいい発言をする、これに対してバイデン候補は自邸の地下室(ベースメント)で批判のスピーチを録画して発信するが、公共の場に出てくる機会は限られる、そんな対立構図がずっと続いていました。その舌戦の内容にしても、とにかく社会の分断を感じさせるだけとも言えたのです。

そうしたなか、世論調査をすると、大統領の支持率は43~44%程度、バイデン氏の支持率は51%前後という数字が出るのが普通でした。それでも、2016年にトランプが実現した「家族にも黙ってトランプに入れる隠れ支持者」が7~8%いるのであれば、両者は互角、そんな見方が多かったのも事実です。

ところが、ここ数週間のうちに、情勢は大きく変化しました。政治サイト「リアル・クリアー・ポリティクス」が発表している主要な世論調査の全国平均によれば、

▼トランプ大統領の支持率は、支持:41.2%、不支持:56.0%
▼トランプ対バイデンの対決での支持率は、トランプ40.3%、バイデン49.5%

という数字が出ており、トランプが大きく支持を落としてきています。例えば保守系FOXニュースの世論調査では、

▽4月4日から7日の調査:トランプ42%、バイデン42%(タイ)
▽5月17日から20日の調査:トランプ40%、バイデン48%(マイナス8%)
▽6月13日から16日の調査:トランプ38%、バイデン50%(マイナス8%)

とそのトレンドはかなり顕著になってきています。

加えて、ここ数日、過去のトランプ政権では起き得なかったような事態が次々に発生するようになってきました。

1つは、コロナ危機政策の破綻です。トランプは3月から4月は大人しく専門家チームの助言に従っていたのですが、4月下旬からは「ロックダウン反対」「経済活動再開を急げ」というメッセージに転じたかと思うと、タスクフォースの専門家たちの発言機会を減らしていました。さらに、アメリカの「保守心情」に根深い「マスクを強制されることへの反発」に迎合して、自分や政権中枢の人々についてはマスク姿を見せないというスタイルを貫いていたのです。

<関連記事:米南部の感染爆発は変異株の仕業?

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story