コラム

スーパーチューズデーで民主党は混戦から抜け出せるのか

2020年03月03日(火)16時10分

一部の専門家は、今回3月3日のスーパーチューズデーで、カリフォルニア、テキサスという大規模州に決着がついてしまうので、以降は「決定打」が飛び出す可能性は低いとしています。その場合は、獲得代議員数の単純過半数を1人の候補(例えばサンダース)が獲得してマジックナンバーをゼロにすることはできず、最終決戦は7月の党大会にもつれ込むかもしれません。

そのような選挙戦になった場合ですが、組み合わせとして次のようなファクターを考慮する必要がありそうです。

まずサンダースは、ブルームバーグを支持する可能性は低いでしょう。「億万長者批判」が売り物のサンダースとしては、「メガ億万長者」であるブルームバーグは敵だとして選挙戦を戦っているからです。そのサンダースは、圧勝が見込まれるカリフォルニア州だけでなくテキサス州でも圧勝するようだと、相当な勢いがつく可能性があります。

反対に、ブルームバーグもサンダースを支持する可能性はありません。ブルームバーグは「アメリカの繁栄を実現した資本主義を守る」ことを出馬の理由にしているからです。

バイデンに関しては、今後の予備選で圧勝し続けて、圧倒的に過半数の代議員を獲得すれば、サンダースが降りて一本化という可能性はゼロではありません。ですが、そうではなくて、例えばブルームバーグの支持の取り付けが先行すると、サンダース派の反発を招いて、2016年の二の舞になる可能性もあります。

そんな中で、混戦模様になると支持率3位から4位につけているウォーレンが興味深い存在になってくるという見方もあります。というのは、元来が共和党支持の企業弁護士であったウォーレンは、選挙戦ではほとんど左派ポピュリストのような言動を展開しているものの、中道政策を受け入れる余地はありそうだからです。

つまり、党大会の現場が大混乱に陥った際に、左派も中道ものめる選択肢として、ウォーレンが浮上するという見方ですが、そのためにはスーパーチューズデーを始めとして、主要な決戦では相当に善戦しておいて、基礎となる代議員数を確保しておかなくてはダメだと思います。

そんなわけで、絞り込まれたと言っても、サンダース、バイデン、ブルームバーグ、ウォーレンの4人の戦いは泥仕合になりつつあります。そうなると、益々有利になるのは現職トランプという流れになりそうです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日米韓が合同訓練、B52爆撃機参加 3カ国制服組ト

ビジネス

上海の規制当局、ステーブルコイン巡る戦略的対応検討

ワールド

スペイン、今夏の観光売上高は鈍化見通し 客数は最高

ワールド

トランプ氏、カナダに35%関税 他の大半の国は「一
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story