コラム

ポスト・ゴーンの日産再編、カギになるのは北米日産

2019年01月22日(火)15時30分

今月、デトロイトで開催された北米国際オートショーで披露された日産のコンセプトカー「IMs」 Rebecca Cook-REUTERS

<フランス政府のルノー・日産経営統合案に日産サイドから不満の声が出ているが、日産は北米日産を軸にポスト・ゴーンの企業再編を積極的に進めるべき>

60日を超えたカルロス・ゴーン氏の拘留については、ようやく保釈への検討がされているようです(東京地裁は22日、弁護人による2回目の保釈請求を却下)。その一方で、フランス政府がルノーと日産との経営統合を仕掛けているといった様々な報道がされています。この経営統合案については、日産は不快感を表明しています。21日のNHKのニュース映像では、少なくとも日産の西川社長は「聞いていない」と話しています。

一連のニュースですが、まず日産とルノーの株式持ち合いは平等ではありません。ルノーは日産の43.4%を持っているのですが、日産はルノーの15%しか持っていません。つまり株の持ち合いではルノーが日産に対して優勢であるかのようなイメージがあります。

また、日産がルノーに出資している部分の株については、フランス法により議決権はありません。反対に、ルノーの持っている日産株には議決権があり、余計にルノーが優勢に見えます。そのような理由から、日産がルノーに支配されてしまう可能性が取り沙汰されているわけです。

ですが、ルノーも日産も上場企業です。ですから、会社の価値については、株価から算出できます。ちなみに、1月21日現在の両者の時価総額は、

▼ルノー:191億USドル
▼日産:425億USドル
(いずれもブルームバーク調べ、ユーロ建て、円建て時価を換算)

となっています。ということは、日産はルノーの倍以上あるわけです。これは、ルノーが日産を支配するのは原則としては不可能ということを意味します。経営統合であれば、日産とルノーが2対1以上の「格差」を保ち、イニシアティブを維持した上での統合になるのが自然です。

ところで、日産がどうしてルノーの2倍以上の価値があるのかというと、その一番の要因は「北米市場」にあります。日産は、2017年の1年間にアメリカ国内で159万台の自動車を販売しましたが、これは業界の6位でありシェアは9.2%でした。一方のルノーとしては、北米での存在感はほとんどゼロです。

日産側から見ますと、アニュアルレポートの数字によれば、2017年度の全体の販売台数が577万台の中で、北米は209万台と全世界の中で実に36%が北米で販売されています。つまり北米日産あっての日産であり、それゆえにルノーに勝る企業価値があると言えます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU重要物資備蓄、仏独伊が役割分担 中国依存脱却へ

ワールド

トランプ米大統領、グリーン氏辞任の下院議員補欠選挙

ワールド

EU大使、ウクライナ向け900億ユーロ融資の詳細で

ワールド

バンス氏とルビオ氏どちらが有力後継者か、トランプ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流していた? 首相の辞任にも関与していた可能性も
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 10
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story