コラム

トランプ訪日で米メディアが唯一注目したのは「鯉の餌やり」

2017年11月08日(水)19時40分

この「餌やりシーン」は、簡単に言えばいかにも「トランプらしい絵」だったので広まったのだと思います。この「鯉の餌やり」ばかりが報じられたということは、反対にそれ以外には「ネタ」はなかったということでしょう。

2つ目としては、外交課題としては事務方が詰めていた実務的な日米合意について、大統領は何も「ちゃぶ台返し」をしなかった、つまりビジネス的には全てが既定路線通りだったということです。長女のイバンカ・クシュナー氏に関係した、「女性起業家基金への出資」というのは世銀のプロジェクトで新しい話ではありませんし、大統領の「大量の武器販売」というのも、既に決定していた話から大きく逸脱するものではないわけです。

一方で、TPPに代わってアメリカの農業に有利なFTAをやるとか、自動車産業に具体的な難癖をつける、あるいは北朝鮮に近い日本で「これまで以上に挑発的な言動をする」というようなことがあれば、アメリカのニュースにもなったでしょう。ですが、そうした「アドリブを効かせた」動きはありませんでした。

3つ目としては、アジアの問題、特に北朝鮮の問題については、関心はあってもアメリカの世論に切迫感がないことが指摘できます。日本の次に訪れた韓国からは、共同会見でトランプ大統領が「北朝鮮には我々への挑戦はさせない」と述べたとか、「大統領が、DMZ(38度線の非武装地帯)を電撃視察しようとしたが濃霧のために断念した」というニュースが入ってきました。

しかし米国時間の7日(火)は、地方選を中心とした「投票日」であり、バージニアとニュージャージーの知事選、ニューヨーク市長選などで民主党の勝利が伝えられると、メディア報道は再び国内ニュース中心に戻っています。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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