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ユネスコの自然文化遺産登録で「和食」の世界は広がるのか?
ということは、日本食の海外への普及ということを、日本食本来の精神に即していくのであればあるほど、「日本原産の生鮮食材」を輸出して「日本と全く変わらないオーセンティックな日本食」を提供するということから離れていっても構わないということになります。そうなると経済効果が限定されてしまいますが、その点は調味料と乾物を中心にまだまだ拡大の余地はあるように思います。
食文化というのは国境を越えた瞬間に、その土地柄に合うように変化していくのは極めて自然です。その自然の成り行きについて「なんちゃって日本食」とか「ニセモノ」だとして忌避するのではなく、海外のそれぞれの土地柄に合わせて「新鮮な食材と季節感、美意識」を高いレベルで実現しているのならば「そうした変化の中に日本食の本質が生きている」ということにしてゆけば良いのです。
アメリカでは、寿司ブームが加熱する中で、板前修業に志願してくるアメリカ人も増えています。彼らは、修行中は真剣に日本人の師匠の言うことを聞いていますが、心の奥には「創作料理」への情熱を抱えた人間が多いのです。そうした人々が伸び伸びと包丁がふるえるようになっていって良いのです。ただし、そこにはある「大枠としての日本食のガイドライン」があり、少なくとも調味料と乾物だけは本国のものがホンモノだと言う信頼感がある、そんな形での「拡大」が現実的ではないかと思います。