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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
グーグル「自動運転カー」の開発に込められた思想とは?
今週9月25日の火曜日、カリフォルニア州は公道において自動運転カー(セルフ・ドライビングカー、別名ドライーバーレス・カー)の試験走行を許可するという法案が成立したと発表しています。何でも、ブラウン知事は、わざわざグーグル社の本社に出向いて法案に署名しながら「非常にエキサイトしていた」そうです。
発表によれば、グーグルは2010年に人間が運転していなくても走行できる自動運転カーの開発をスタートし、これまでに30万マイル(約48万キロ)の公道を含む実地走行試験を実施し、この間は無事故だったそうです。(2件の軽微な事故に巻き込まれたという報道もありますが)ちなみに、このプロジェクトそのものに関しては、グーグルにとっては「IT新規事業のインキュベーション」の1つになるわけですが、重要な次世代テクノロジの1つとして、アメリカの連邦政府とかスミソニアン基金などのカネも入っています。
それはともかく、グーグルはどうして、こんな「SF映画」のようなプロジェクトに突っ走ったのでしょう。法案の成立セレモニーでは、同社の共同創業者であるセルゲイ・ブリンが、担当役員として「視覚障害者など自動車の恩恵に浴していない人の生活を改善できる」という目的を語っているようですが、実はそれだけではないようです。
このプロジェクトの中心人物は、スタンフォード大学のセバスチャン・スラーン研究員と言って、グーグルはこの大学に産学連携の体制を作っているのですが、そこの責任者という格好です。スラーン氏はグーグルのVPも兼任しており、正に産学連携体制そのものというわけです。
そのスラーン氏によれば、この「自動運転カー」開発のキッカケは、自動車事故への怒りだというのです。若い時に友人を交通事故で亡くした経験から「自動車は人間が運転するからヒューマンエラーのために事故を起こす」という認識、そして「人間より精度の高い運転を機械により実現すれば、多くの人命が救われる」という信念に至ったのだそうです。
ちなみに「人間の精度の低さ」というのは、例えば「車間距離を開けないといけない」というのは、「人間という劣った存在が運転する」ことで前後のクルマが協調して正確に運転することができないから必要なので、結果的に渋滞を招いて時間とエネルギーをムダにし、道路というスペースもムダにしているというのです。また「車線間のヨコのスペースや路側帯を開けなくてはいけない」というのも、人間の運転が下手クソだからだと言っています。
つまり、精度の高い自動運転にすれば「事故は激減」し「車間距離や路側帯、車線の幅」などスペースや資源のムダも省けるというのです。このスラーン氏の、またグーグルの考え方を「思想」という観点で捉えれば、これはかなり大胆で興味深いものだということが言えます。
私は2009年に北米トヨタが「クレーム問題」という「冤罪」に巻き込まれた時期に、ハイブリッドなど「エコカー」の安全性について、もっと多角的な検討がされるべきだという提言をしたことがあります。いわゆるエコカーは省エネのために「薄い鋼板」を使う一方でパワーが抑えられていることから「受動安全性」も「能動安全性」もガソリン車に劣ること、高電流の電池を搭載していることから、非純正の電池などを使用した場合に発火する危険があるのに加えて、クラッシュ時の感電対策など新たな問題があること、無音に近いために歩行者に接近を知らせる必要があること、などがそうです。
その一方で、エコカーがブームになることで、より豪華な艤装の車で、より高速で快適に移動することが「高級」だという付加価値が消滅する危険もある、だが、これに対して「高度なハイテクによる安全性確保」ということを新たな付加価値にしてゆくべきだ、ということも併せて主張したのを覚えています。今回のグーグルのプロジェクトは、こうした問題に関して根本から「自動車という文明」を問いなおす試みだとも言えるでしょう。
ちなみに、公道走行を認可する法律が施行される前に、何十万キロもの試験走行をしていたという報道を受けて「脱法性のある試験走行もおとがめなし」としているアメリカは「イノベーションへの理解がある」として、日本は「コンプライアンスの自縛」に陥っているからダメだというような論調を目にしました。
ですが、グーグルは、カリフォルニアでもネバダでもちゃんと「仮免」を取ってテストしていたようです。アメリカではペーパーに受かればいきなり仮免が出て公道で堂々と練習ができるわけで、「機械」もそうしていただけというわけです。仮免での路上運転では成人ドライバーが横に座っている必要がありますが、「自動運転カー」の試験走行の認可条件においては、それも同じだったそうです。
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