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【写真特集】ライオンもサイもいない スター不在の地味にすごい国立公園を救え
The Lost World of Udzungwa
Photographs by Frédéric Noy
ウズングワ国立公園の端に位置するサンジェ村近くでサトウキビを運ぶトラック。周辺ではサトウキビやコメなどの単一栽培農業が広がり、農地を拡大している
<世界的にオーバーツーリズムが深刻化する中、タンザニアではスター動物不在で観光地として無視されるうちに、周辺の人口増加や農地開発に飲みこまれている野生生物の楽園がある。経済活動と環境保全との均衡維持を目指す現地の取り組みとは>
壮大な自然と野生動物に恵まれた東アフリカのタンザニアには22の国立公園がある。特に有名なキリマンジャロやアルーシャ、セレンゲティを中心に、昨年は150万人以上の観光客が殺到した。だが、年間たった8000人しか訪れない国立公園もある。国の中心に位置するウズングワだ。
山々に熱帯植物が生い茂り、1979年に固有種のサルであるサンジェマンガベイが発見された少々マニアックなウズングワには、ライオンもサイもヒョウもいない......ということを、観光客もよく承知しているらしい。
アフリカ大陸でも有数の生物多様性と肥沃な大地を誇るこの「知られざる楽園」は、観光地として無視されるうち、徐々に周辺の農村人口増加や農地開発、森林伐採によって侵食されてきた。

環境保護団体などは周辺農家への環境教育に加え、野生動物が人間に妨害されずに移動できる回廊づくりに取り組む。同時に、観光客誘致にも力を入れる。土地を保護する最善の方法は、その地に価値を持たせることだからだ。
生物多様性の聖域は、その生き残りのために、創意工夫が求められている。
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Photographs by Frédéric Noy; Project carried out as part of a photographic commission initiated by the Yves Rocher Foundation
撮影:フレデリック・ノワ
フランス人ドキュメンタリー写真家。タンザニア、ナイジェリア、スーダン、チャド、ウガンダ、カザフスタン、インドを拠点に「スロー・ジャーナリズム」の手法でニュースの背景にある社会の課題を時間をかけて取材している。フランスの主要メディアを中心に作品を発表。
【連載21周年】Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」2025年10月28日号掲載
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