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【写真特集】カシミールの天空を走る新鉄道 めくるめく絶景の鉄旅とインドの軍事戦略
Train Connection
Photographs by Jelle Krings
新路線でカシミール観光に向かうインド人夫婦。ヒマラヤの絶景を楽しめるよう座席は窓に面した方向に回転できる
<ヒマラヤの絶景を堪能する列車の旅が売りのインドの新路線。川面から359メートルの高さに架けられたチェナブ橋は、「世界一高い鉄道橋」としてギネス世界記録に認定された。政府が強調するカシミールの地域経済活性化計画の裏側にある、印・パの係争地の統制強化>
長年、印パの領有権抗争が続くカシミール地方のインド支配地域にはこれまで、高額な空路か、通行止めが頻発する山間部の陸路でしかアクセスできなかった。だが今年6月、インド北部とカシミール渓谷の中心都市スリナガルなどを結ぶ新たな鉄道路線が開通。首都ニューデリーからカシミールに鉄道でアクセスすることが可能になった。
ヒマラヤを貫き、36のトンネルと943の橋を通る全長272キロの新路線は傑出した技術力のたまものだと、モディ政権は胸を張る。さらに、観光客誘致や雇用創出を通して地域経済活性化の起爆剤になるとも強調している。
だが地元住民の受け止め方は異なる。カシミールはインドで唯一、イスラム教徒が多数を占める地域だ。独自の文化と言語を必死で守ってきた人々の目には、鉄道の敷設はインドによる軍事的支配と文化的同化の象徴と映る。
今年4月のテロを機に印パの武力衝突が再燃して以降、カシミールではインド治安部隊の人員や軍備が一段と増強されている。そんななかで開通した新路線は、地域の微妙な均衡を崩す最後の一押しになるかもしれない。

カシミールへの玄関口となるジャンムー・タウィ駅
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Photographs by Jelle Krings-Panos
撮影:イェレ・クリングス
1989年、オランダ生まれの写真家、マルチメディア・ジャーナリスト。戦争、移民、気候変動、地政学的な問題など大規模なテーマを、人物やコミュニティーに焦点を当てながら、人間的な視点から描く。英ガーディアン紙、米CNNなどの主要メディアで活躍
【連載21周年】Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」2025年10月21日号掲載
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