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【写真特集】ゾウと人間 生きるために戦うしかない 生存を懸けた終わりなき争い
FIGHT FOR HOME
Photographs by K M Asad

バングラデシュ北部シェルプール近郊の水田で、村人に向かって突進するゾウ。土ぼこりを上げながら、猛スピードで向かってくる(2022年4月)
<巨大な動物が森から飛び出す。身にまとった土を舞い上げ、猛スピードで突進するゾウに対峙する村人。衝突は日常的に起こり両者の命を削る。バングラデシュ、インド、ミャンマーの野生のゾウの移動ルートは、森林伐採と無計画な開発などで複雑化する中で、村人の貧困ライン以下のつましい暮らしを脅かすゾウ。きれい事だけでは見えない問題の本質、バングラデシュ人フォトグラファーの切なる願いとは。>
インド国境に接するバングラデシュ北部シェルプール近郊では、ゾウと村人の生存を懸けた戦いが日々繰り広げられている。森林伐採や開発で生息地域を追われたゾウは、食料を求めてインドから国境を越えてやって来る。田畑を踏み荒らし、人家を破壊し、時には村人との衝突でゾウが命を落とすこともある。
一方の村人も、作物を守るために松明をかざし、太鼓を打ち鳴らし、電気柵を設置してゾウを寄せ付けないようにする。しかし農作物への被害は甚大で、暴れるゾウに殺される人も後を絶たない。
バングラデシュの写真家KMアサドは、この問題を解決するためにはまず、この「戦い」が日常化していることをメディアの報道で広く知らせることが必要だと考えている。国際メディアの報道がなければ、政府は対策を講じようとしない。絶滅の危機に瀕したゾウを保護し、一方で村人の生活を支援するためには、政府の対策が必要だ。
それがなければ、ゾウと人間が何世紀も共存してきたこの景観は失われてしまう。
手に手に松明を持ち、ゾウを水田から追い払おうとする村人(22年4月)
Photographs by K M Asad
撮影:K M アサド 1983年、バングラデシュの首都ダッカ生まれ。ドキュメンタリー写真家兼フォトジャーナリスト。フォトジャーナリズムを学び、2008年から自国の災害や事故、学生運動、南アジア地域の社会課題、環境問題、人道危機などを取材。コミュニティーや個人に与える影響をテーマに活動している。
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【連載21周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」
2025年7月22日号掲載
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