コラム

JICA「ホームタウン」騒動で失われた日本の国益...中国もにらんだ国際援助・交流が必要だ

2025年10月16日(木)20時33分
JICA、ホームタウン、円借款、アフリカ、国際協力、国際援助、内田哉也子、阿武野勝彦、移民、国益、外国人、トランプ、中国、一帯一路

今回のAIイラスト:情けの戦略的バタフライ・エフェクトを考えよう AI GENERATED ART BY NEWSWEEK JAPAN VIA DALL-E3

<JICAは世論に向き合わなかった。だが開発協力や国際交流は中国に対抗する上でも戦略的にかなり重要だ>

先日、ドキュメンタリー映画『戦後80年 内田也哉子 ドキュメンタリーの旅「戦争と対話」』のトークショーに出席した。映画の企画・プロデュースは東海テレビで『さよならテレビ』など話題のドキュメンタリーを制作してきた阿武野勝彦さん。「戦争の対義語は平和ではなく『対話』ではないか?」と考えて一連のシリーズをつくったという。

印象深かったのは「最近やたら『国益』って言う人いますよね、SNSとかで」という阿武野さんの言葉。この作品が大きな主語で語る戦争でなく、個人の生き方を追うものだから余計に気になるのだろう。


そもそも「国益」って何だろう? そう考えてしまうニュースを最近よく見る。例えばホームタウン騒動だ。事の発端は第9回アフリカ開発会議(TICAD)で、日本の国際協力機構(JICA)がアフリカ各国と交流の深い国内4市を各国の「ホームタウン」に認定したことにある。

「発表直後から、SNSなどでは『移民が押し寄せてきたら誰が責任をとるのか』といった投稿が急速に拡散し、4市には抗議の電話やメールが殺到。『JICA解体』デモまで起きる騒動へと発展した」(朝日新聞9月14日)

ナイジェリア大統領府が「日本政府が特別査証(ビザ)の枠組みをつくる」と誤った声明を出したことなども混乱に拍車をかけた。誤情報がさらに誤情報を生む問題もあった。

今回の騒動について日経新聞は「開発協力の王道伝えきれず」(9月11日)と報じた。ネットで「JICAは年間2兆3100億円を無駄遣いしている」などの声が飛び交ったことについて同紙は、この金は支出やバラまきではなく「インフラ整備などのために日本が途上国に貸し付ける金額だ」として「援助形態の違いをわきまえないと誤解に陥りやすい」と指摘する。なので「経済外交の柱である開発協力を担う組織として、JICAは世論にしっかりと向き合い、開発協力の重要性を説明しなければならない」と結ぶ。

視点を広げてみよう。同時期の次の記事にも注目せざるを得なかったからだ。「中国、アフリカ投資6兆円」(日経新聞9月13日)である。

プロフィール

プチ鹿島

1970年、長野県生まれ。新聞15紙を読み比べ、スポーツ、文化、政治と幅広いジャンルからニュースを読み解く時事芸人。『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』(双葉社)、『お笑い公文書2022 こんな日本に誰がした!』(文藝春秋)、『芸人式新聞の読み方」』(幻冬舎)等、著作多数。監督・主演映画に『劇場版センキョナンデス』等。 X(旧Twitter):@pkashima

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油10%急騰、イラン攻撃受け 100ドル超の予想

ワールド

米国民の43%がイラン攻撃「支持せず」=ロイター/

ワールド

対イラン軍事作戦、全ての目標達成まで継続へ トラン

ワールド

米兵3人死亡、対イラン作戦で初 米軍発表
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 4
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 5
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 6
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 7
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 8
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 9
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 10
    今度は「グリンダが主人公」...『ウィキッド』後編の…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story