コラム

オウム死刑で考えた──日本の「無宗教」の真実

2018年07月13日(金)15時30分
オウム死刑で考えた──日本の「無宗教」の真実

無宗教と言いながら日本人の9割以上は宗教に関連したことをやっている RoBeDeRo/iStcok.

<日本人は無宗教というけれど、多くの人は「宗教っぽい何か」を信じている。その現実と向き合わないと、次のオウム真理教が生まれる可能性は排除できない>

麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚ら、オウム真理教の元幹部7人の死刑が7月6日に執行され、世間は久しぶりにオウムの話題で沸騰した。僕の周りでは「宗教って怖いね~」や「日本人はだいたい無宗教でよかったな~」といった声が多かった。

死刑執行の翌日に乗った飛行機の機内アナウンスで、キャビンアテンダントの声が流れてきた。「〇〇航空をご利用いただきありがとうございます。今日は七夕です。皆様が短冊にお書きになったお願いが叶いますように、乗務員一同、お祈り申し上げます」。

興味深い。

機内を見回すと誰も不思議そうな顔はしていない。「色紙に記し、笹から吊るしたお願い事が、乗務員の祈祷力で成就するかもしれない」という意味に取られてもおかしくないこの一節を、無宗教の人は何の違和感もなく聞き入れるのかな。そういう疑問が頭の中に浮かんだ。もちろん、社交辞令として聞き流している可能性はある(もちろん、乗務員は本気で祈っていると思うけど)。でも、こんな言葉に見え隠れする異次元の力を、どこかで信じている部分もあるのではないかと思い始めた。

日本人はお守りを捨てられないし、鳥居をくぐるときは頭を下げる。具体的なメカニズムが分からなくても「罰当たり」は、ほぼ全国民がなんとなく信じているのではないだろうか。

批判ではない。僕も毎年初詣をするし、お線香をたいて亡くなった親戚に手を合わせる。20年前にもらっただるまも、なぜか処分できない。鍵や携帯電話が見つからないときは必死に神様に祈る。しかも、どれも無神論者と自称しながら。

僕だって言っていることとやっていることが違う。認めよう。

では、日本の皆さんは本当はどこまで無宗教なのか。NHKが5年おきに行っている「日本人の意識」調査のデータを見ると驚きの実態が浮き彫りになる。神を信じる日本人は3割以上いる。仏だと4割を超える。約6人に1人が奇跡を、ほぼ同じ割合でお守りの力を、さらに7人に1人以上があの世・来世を信じる。逆に「宗教や信仰に関係していると思われることは何も信じていない」と答えたのは25%にとどまる。どうやら、大半の国民になんらかの信仰心はあるようだ。

行動を見るともっと驚く。7割以上の人がするというお墓参りをはじめ、合格祈願をしたり、おみくじを引いたりなどの「宗教や信仰に関係していると思われること」を行っている人が圧倒的に多い。何もしていないというのはたったの7.5%だけ。つまり、「宗教っぽい何か」を信じている人が75%、やっている人が92.5%もいるということだ。個人的には、少なくとも2割近くは存在するはずの「信じていないのに宗教っぽい何かをやっている」人も気になるけど、とにかく、データから見えてくる日本人は無宗教と言いづらいのだ。

批判ではない。僕だって超自然の力を信じる。僕の好きなヤクルトスワローズも優勝できたし、相方のマックンも結婚できた。奇跡以外で説明がつかない。僕も日本の皆さんも「無宗教」と名乗らないほうがいいのかもしれない。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

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