コラム

持ち主を追いかけて自走し、現在位置を通知する次世代スーツケース

2016年08月05日(金)16時30分

スーツケースの進化形 Cowarobot R1

<ユーザーを追走し、離れた位置から呼び寄せることもできる。そして、ユーザーとの距離を感知して自動ロックを行い、現在位置をGPSで知らせる次世代スーツケースが登場した>

 旅行用のスーツケースは、これまで、求められる容量を満たした上での軽さや耐久性を競ってきた。しかし最近では、旅行という行為自体にもデジタル化の波が押し寄せ、それにともなってスーツケースもスマート化する傾向にある。

 たとえば、日本でも目にする機会が増えたドイツのリモワは、自社のラインナップにエレクトロニック・タグ付きモデルを加えている。これは、側面に電子インクディスプレイを備え、スマートデバイスのアプリから目的地空港までのラゲッジタグを無線送信して表示できるという製品だ。

 エアライン側の対応も、まず地元ドイツのルフトハンザからスタートしており、他にもユナイテッドなど4社がテスト中だが、こうした流れは確実に加速していくことだろう。

 そして、その先にはスーツケース自体のロボット化が控えている。つまり、置き忘れた際の現在位置の通知や、スマートフォンやタブレットデバイスに対する電源供給はもちろん、ユーザーを認識して自動で追走したり、ユーザーの手許まで自律的に移動してくるようなことが現実になるのである。

 この分野の先駆者となったCowarobot R1(定価699ドル)は、独自のコ・ムーブ(C0-MOVE)システムの採用により、ユーザーの手首に装着された専用ブレスレットを感知して、手の届く距離を保ちながら最大時速4.5マイル(約7.2km/h)のスピードで移動する。加えて、ハンドル部や底面近くに内蔵されたセンサー類(ソナー、深度センサー、エッジセンサー)が周囲の状況を把握し、障害物を避けたり、階段から落ちないように自律制御を行うことで、安全でスムーズな移動を可能とした。

 多少離れた位置からユーザーのところまで呼び寄せることもでき、これは、カフェなどでテーブル脇にスーツケースを置くスペースがない場合などに重宝しそうだ。

 駆動は底部中央に組み込まれた特製の車輪によって行われ、ハンドルから手を離すと瞬時に繰り出されて走行状態に入る。しかも、メカニズム部分の容積を合計しても、全体容量の4%以下に収まり、スーツケース本来の収容力にはほとんど影響しない。

Cowarobot3.jpg

 この他にも、ユーザーとの距離を感知して自動ロックを行い、再びブレスレットでタッチすればロック解除される仕組みや、置き忘れをブレスレットの振動で予防する機能、スーツケースの現在位置をGPSで知らせる能力も備えている。

Cowarobot2.jpg

 さらに、着脱可能な内蔵バッテリーはスマートフォンなどを充電するパワーバンクとしても利用でき、iPhone 6S Plusを9回フル充電できる19,300mAhの容量を持つ。

 2016年10月から出荷開始予定のこの製品は、次世代のスーツケースのベンチマークとなりそうだ。

プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー、NPO法人MOSA副会長。アップル、テクノロジー、デザイン、自転車などを中心に執筆活動を行い、商品開発のコンサルティングも手がける。近著に「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか」(現代ビジネスブック)「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著・三省堂)、「東京モノ作りスペース巡り」(共著・カラーズ)。監修書に「ビジュアルシフト」(宣伝会議)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州委、米の10%関税受け入れ報道を一蹴 現段階で

ワールド

G7、移民密輸対策で制裁検討 犯罪者標的=草案文書

ワールド

トランプ氏「ロシアのG7除外は誤り」、中国参加にも

ワールド

トランプ氏、イランに直ちに協議呼びかけ 「戦いに勝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story