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シリーズ日本再発見

「特急オホーツク」「寝台特急北斗星」がタイを走る...地元でも愛される、中古車両の幸せな「第2の人生」を追う

2023年09月17日(日)09時52分
𠮷岡桂子(朝日新聞記者)

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タイで再出発した日本の機関車DD51=2019年9月20日 タイ・ノンプラドク 筆者提供

北斗星 タイで輝く

複線化を進める工事用の車両として輸入された中古のディーゼル機関車DD51を取材したことがある。北海道で寝台特急北斗星を牽引していた鉄道愛好家に人気のある機関車だ。

輸入したAS社によれば、1両あたりの価格は輸送費こみで4000万円。日本の鉄道愛好家らがクラウドファンディングで約180万円を集めて、技術指導者を日本からバンコクへ派遣した。

輸入にあたって日本語の資料しか添えられておらず、整備に苦労していたからだ。運転席の表示も耐雪、空転、停止と表示も日本語のままだった。

中心となったのは、木村のほか、長崎の吉村元志、北海道の小林涼太郎らだ。

「長く使ってもらえるように協力したい」と話す日本側に対して、AS社のポンサック・スティーブンは「会社じゃなく、ひとりひとりの有志としての支援がほんとうにうれしい」と応じた。

自分の祖父が日本で運転していた機関車だといって、わざわざ見にきた日本人もいた。「大事にされていたんだなあ、と愛着がわきました」。スティーブンは笑顔をみせた。

この会社がある辺りは戦中、日本軍が多くの施設を展開していた。「戦争で亡くなった人の幽霊が出るってうわさもあるのですよ」。そう付け加えた。

負の歴史を抱える地で、温かな交流が生まれている。吉村は日本から持参した北斗星のプレートを手渡した。

その後も、日本の技術者による相談や指導をこつこつと続けている。吉村は言う。

「中古車両が活躍できるかどうかは、車両の善し悪しだけでなく、いかにメンテナンスするかが大きい。技術者の交流などソフト面の支援があってこそ、より長く使えます」

中古車両が心を通わせるきっかけになるとしたら、第2の人生、これほどの輝きはない。

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