最新記事
シリーズ日本再発見

脱炭素化までの道に電力危機が...「ZEB」がエネルギー問題解決の一手に?

2022年08月02日(火)14時10分
西田嘉孝

ここで言う省エネとは、高断熱ガラスなどの建築的手法を除けば、空調、換気、照明、給湯、昇降機(エレベーター)の5設備が対象で、OA機器など設計図に記載されない機器による省エネは対象外だ。これらによる省エネで削減されたエネルギーに、太陽光発電などで創出されたエネルギーを加味して数値化し、第三者認証機関が評価した建物がZEBシリーズとして認証を受けられる。

光熱費などのランニングコスト削減や、快適性や不動産価値の向上、国からの補助金などを含むコストメリットなど、民間のビルオーナーにとってもメリットは大きい。とはいえ、省エネ設備の選択や導入、エネルギー量の複雑な計算など、ZEB認証を受けるためのハードルは決して低くない。

そこで、建築主に対する支援を行うのがZEBプランナーだ。大手設計事務所や大手ゼネコン、電気設備メーカーなど約300社がZEBプランナーとして登録している。ZEBの全国的な普及はまだこれからだが、一般社団法人環境共創イニシアチブによれば、これらZEBプランナーによるプランニング実績は着実に増えてきており、2017年の133件から、2021年には651件まで積み上がった(累計)。

トータルなZEBプランニングによる沖縄の特別養護老人ホーム

ZEBプランナーの中でも、後発ながら独自の強みを発揮するのがパナソニック エレクトリックワークス社だ。パナソニックでは、空調機や照明器具など幅広いラインナップの省エネ設備をはじめ、高性能な太陽光発電や蓄電池などの自社製品を擁している。

「幅広い製品から最適なものを導入し、EMS(エネルギーマネジメントシステム)での設備連携・見える化を図ることで、省エネ性能をより高めることができる」と、パナソニック エレクトリックワークス社の小西豊樹さんは言う。

「省エネの他にも、太陽光や水素などを活用した創エネによるレジリエンス性能の向上、画像センサーや入退室管理システムとの連携など付加価値となる周辺サービスの提案まで、トータルなZEBプランニング支援が行えるのが私たちの強みです」

2019年の市場参入から、同社はZEBプランニング実績を徐々に伸ばしてきた。昨年は9件。今年は6月末ですでに15件を数え、年度末までに40件、受注金額20億円を目指すという。その第一号案件となったのが、2019年に開所した「久辺の里(くべのさと)」だ。沖縄県名護市、沖縄本島のほぼ中央に位置する特別養護老人ホームである。

webBZ20220802okinawa-4.jpg

2021年6月に開所した、「ZEB Ready」の特別養護老人ホーム「久辺の里」。屋上からは辺野古の海を一望できる Courtesy of Panasonic

延床面積は2953.93平方メートル。新築の鉄筋コンクリート造り3階建てで、入所定員は特養29床、短期入所20床、デイサービス20名。近隣住民の避難所として名護市と防災協定も締結している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、2日に予算教書公表 環境・対外援助など

ワールド

イスラエル、シリア大統領官邸付近を攻撃 少数派保護

ビジネス

JAL、今期の純利益7.4%増の見通し 市場予想上

ワールド

NZの10年超ぶり悪天候、最悪脱する 首都空港なお
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中