最新記事
シリーズ日本再発見

ふるさと納税は2年で750%増、熊本の人口4000人の町が「稼げる町」に変わった理由

2021年04月14日(水)19時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
熊本県の黒川温泉

熊本県の黒川温泉 takafumi99-iStock.

<黒川温泉で有名な熊本県の南小国町が「奇跡」のような変貌を遂げている。コロナ禍においても、物産館とふるさと納税は対前年比プラスの成長。成功の秘訣はいったい何なのか>

熊本市内から1時間半ほど車を走らせたところに位置する南小国町。この地名にピンとこない人でも、「黒川温泉」の名は耳にしたことがあるだろう。南小国町は、黒川温泉のある町だ。

黒川温泉には約30の温泉宿が点在し、年間100万人以上の観光客が訪れ、毎年のように人気温泉ランキングのトップ10に名を連ねる。外国人からの人気も高く、インバウンド需要も高い。

つまり観光業における「キラーコンテンツ」を有しているわけだが、それにもかかわらず、南小国町は悩みを抱えていた。

温泉に泊まる宿泊客の満足度は高く、リピーターも多い。だが町に滞在する時間が短く、温泉以外のアクティビティでの消費額が非常に少なかった。

加えて、2016年の熊本地震や2020年に世界中を襲ったコロナ禍。観光業は天候や災害、景気の影響をまともに受けがちだ。また、町の主要産業である農業や林業で、人口減少に伴う担い手不足が深刻だった。

ところが今、南小国町は「絶好調」だ。コロナ禍にもかかわらず、例えば町の物産館の売り上げ、ふるさと納税の寄付額、いずれも対前年比プラスの結果を出している。

全国各地で同じような悩みを抱える町は少なくないだろう。なぜ南小国町は生まれ変われたのか。そのきっかけは、2018年に設立された日本版DMO「株式会社SMO南小国」にある。

DMOとは、観光地域づくり法人(Destination Management/Marketing Organization)の略称で、日本では2015年に登録制度が創設された。2021年1月現在、SMO南小国のようなDMOは300近くあるが、自力経営できている組織はわずかとも言われている。

なぜ南小国町は、日本版DMOを設立したのか。そして、なぜSMO南小国は成果を上げることができたのか。

設立準備期から3年間、同町に並走してきた柳原秀哉氏が当時の様子を振り返りつつ、成功の秘訣をまとめたのが『南小国町の奇跡――稼げる町になるために大切なこと』(CCCメディアハウス)だ。

「どの会合に行っても同じ顔ぶれ、同じ話ばかりだった」

課題解決のためのコンサルタントとして、柳原氏が南小国町に持ち込んだのは「事業開発」視点だ。ビジネスモデルをつくる、組織と人を適材適所に配置する。つまり、会社を経営するように町を経営することを促した。

もちろん、突然やってきた"よそ者"のコンサルタントが押しつけるだけでは、地元住民の反発を生むだけ。しかし、よそ者だからこそ見えるものもある。

2017年の冬、髙橋周二町長にDMO設立を考えていると告げられた南小国町観光協会会長の平野直紀氏は、本書に収録されたインタビューで当時をこう振り返る。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中