最新記事
シリーズ日本再発見

「AKB48」式アイドルが韓国アイドルより中国で人気の理由

2017年09月12日(火)16時46分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

第二に、インターネットの活用の遅れだ。例え海賊版であったとしても、動画配信サイトや音楽視聴サイトでの露出は、認知度を高める強力なブランディングツール。日本エンタメはそもそもインターネットへの取り組みが遅く、ネットでのコンテンツ露出量が他国に比べて劣っていた。

唯一、世界的にプレゼンスを保っているのはアニメだが、インターネット配信の取り組みが早く、また大量の海賊版によって露出量を保っていたことが背景にある。

【参考記事】第四次アニメブームに沸く日本、ネット配信と「中国」が牽引

来日した上海のアイドル「Idol School」にインタビュー

では、日本エンタメがさっぱり存在感を残せないなかで、なぜ中国で日本式グループアイドルのビジネスモデルが人気になるのだろうか?

その疑問を解くべく、筆者は上海のアイドルグループ「Idol School」に取材を申し入れた。同グループは2014年の成立。プロデューサーに元モーニング娘。中国人メンバーの銭琳(リンリン)を擁し、前山田健一(ヒャダイン)など日本人作曲家からの楽曲提供を受けている。メンバー数は現在、12歳から23歳までの40人。

8月27日、横浜アリーナで開催されたアイドルイベント「@JAM EXPO」に出演するため来日した際にインタビューを行った。

今回、来日したメンバーは陳沁、蒋貞、李飛燕、李欣然、王瀞萓、兪璐、張愛麗、張千千、周雪の9人。日本での初ライブの感想を聞くと、「すごい熱気に驚いた」「中国よりもファンの反応は熱い」との回答が返ってきた。

japan170912-2.jpg

アイドルフェス「@JAM EXPO2017」でのIdol Schoolのステージ(写真提供:Idol School)

メンバーを率いるマネージャーは、中国でグループアイドル人気が高まったのはここ2年のことであり、日本と比べればあらゆる面で未成熟、成長途上だと指摘した。例えば、アイドルを応援する"オタ芸"の定番である"MIX"にしても、中国では「タイガー、ファイヤー、サイバー、ファイバー、ダイバー、バイバー、ジャージャー」という日本語がそのまま用いられている。中国にローカライズされた応援スタイルはまだ生まれていないのが現状だ。

さらに、日本のJASRACのような音楽著作権団体の力が弱いことから作曲家の収入が少なく、アイドルの楽曲を作る制作者が少ないという課題もある。Idol Schoolは持ち曲の半分は日本の作曲家に依頼、残る半分は銭琳が作曲しているという状況だという。

そんななか、Idol Schoolは一部メンバーを日本の芸能事務所による冬季研修コースに送り込むなど、積極的に日本から学んでいる。その蓄積の上で中国流のアイドル文化を確立するのが目標だ。

【参考記事】改めて今、福原愛が中国人に愛されている理由を分析する

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド・EUのFTA交渉、鉄鋼・車・炭素税でさらな

ビジネス

日産社長「国内事業を再始動」、新型エルグランドとパ

ワールド

豪の難民ナウル移送、秘密裏の実施を懸念=人権委

ビジネス

消費者態度指数、10月は3カ月連続上昇し35.8 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 4
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 9
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 10
    怒れるトランプが息の根を止めようとしている、プー…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中