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クラフトビールの「第3次」ブームが、これまでとは違う点

2017年02月28日(火)16時12分
安藤智彦

その後訪れた第2次ブームでは、第1次ブームを生き残った一部の生産者と、国内外で専門的な研鑽を積んだ新たな造り手が「進化型」地ビールを牽引。地域ごとのカラーを打ち出しつつ「美味い」ビールとして成立させる、実力ある醸造所が台頭してきた。

その代表格として挙げられるのが「よなよなエール」で知られる長野県のヤッホーブルーイングや、94年の規制緩和の折に第1号として醸造を開始した新潟県のエチゴビールだ。ビールの国際コンペティションでも入賞するクラフトビールが続出するなど、その評判も着実に高まったのがこの時期だ。

現在進行中の第3次ブームでは、個性ある小規模醸造のビールに目をつけた大手メーカーも市場に参入。2014年には、キリンビールがクラフトビール専門の醸造所と飲食店を併設した店舗「スプリングバレーブルワリー」を東京・代官山で開業した。

世界的なブームも追い風に、海外から輸入されるクラフトビールもますます多様なものとなった。酒販店で専用の棚が設けられ、クラフトビール専門店を標榜する飲食店も一気に増えてきている。

日本とアメリカにクラフトビール・ブームが訪れた理由

ところでビールの母国であるヨーロッパでは、小規模醸造が基本のクラフトビールというスタイルは、むしろ当然のものだった。地域ごとのカラーや造り手の個性を反映したレシピがビールに注ぎ込まれ、数百数千という銘柄が楽しまれてきた。

そうしたビール文化を輸入する格好となったアメリカや日本では、醸造所というよりも「工場」で大量生産された画一的なビールが最初にあって、そこに飽き足らなくなった段階でクラフトビールというアプローチが模索され始めた。

つまり、ビール文化という文脈で考えれば、クラフトビールが市民権を得た日本は、ようやくその第1歩を記し始めたと言ってもいいだろう。

現在のブームがまたも一過性で終わるのか、それとも文化として根付くのか。

2000年代後半から続くクラフトビールの隆盛をみれば、心配はいらない気もする。15年からはサッポロビールが専門子会社を通じて「クラフトラベル」ブランドを展開し、16年には通販化粧品大手のDHCがビール事業に本格参入、さらにこの3月からはキリンビールが米国発クラフトビール「ブルックリンラガー」の全国展開を開始するなど、大手企業の動向も激しい。

ともあれ、あまり小難しいことは考えずに、とりあえずの一杯を楽しむべきなのだろうけれど。

【参考記事】日本独自のコーヒー文化は、喫茶店と缶コーヒーだけじゃない

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