最新記事
シリーズ日本再発見

日本独自のコーヒー文化は、喫茶店と缶コーヒーだけじゃない

2017年02月24日(金)16時00分
安藤智彦

The Roast(ザ・ロースト) Photo: Panasonic

<世界的潮流を横目に、独自の形態へと進化してきた日本のコーヒー市場。ネスカフェアンバサダーはその最新のものといえるが、そこにパナソニックが家庭向けのこだわりの新サービス「The Roast」を開始する>

【シリーズ】ニッポンの新しいモノづくり

日本人の日常に、すっかり定着した感のあるコーヒー。2016年の国内コーヒー消費は47万トンを超えた。これは5年連続の増加で、もちろん過去最高の数字だ。

あくまでも舶来物だったコーヒーが、国内でここまでの地位を得るに至った理由の1つは、日本流のアレンジにある。中国から輸入した漢字は、仮名も交えて独自の形態へと進化したが、コーヒーでも同様のことが言える。

その象徴的な存在が、喫茶店文化だ。第2次大戦後に日本のコーヒー消費の大半を担った、個人経営の喫茶店。使用する豆から焙煎のレシピ、淹れる機器に供する器まで、店主のこだわりが細部にまで行き渡った喫茶店が全国各地に浸透していった。

「サードウェーブ」の旗手と呼ばれ、2年前に日本にも上陸したアメリカのブルーボトルコーヒーが創業に際して日本の喫茶店を徹底的に分析したのも有名な話。ハンドドリップで1杯ずつ丁寧に淹れる日本の喫茶店文化のエッセンスが、ブルーボトルにも反映されている。

ところで、世界的なコーヒー消費の潮流は、これまで3つの大きな節目で分類されてきた。第1の波=ファーストウェーブは、生産技術の向上と流通の発達により、大量生産&大量消費が進んだ19世紀後半から1960年代までを指す。この時期に、コーヒーは世界的にポピュラーな飲み物としての地位を獲得した。

第2の波=セカンドウェーブは、1960年代以降のシアトル系コーヒーチェーンを中心とする、深入りのコーヒー豆を使ったコーヒーの台頭だ。シアトル系コーヒーチェーンとは、スターバックスやタリーズコーヒー、シアトルズベストコーヒーなど、ワシントン州シアトルに代表されるアメリカ西海岸から発展した店舗群のこと。

浅く焙煎したコーヒー豆を使うアメリカン・コーヒーとは違い、エスプレッソをベースにしたメニューが取り揃えられていた。コーヒーチェーンごとのロゴがついた紙コップを片手に歩くことが、ファッションアイコンともなった時代だ。

そして2000年代以降、潮流となってきたのが第3の波=サードウェーブだ。ブラジルやコロンビア、エチオピアといったコーヒーの生産国単位でのブランディングを超え、生産農家単位で生豆を契約して仕入れたり、上述のように、日本の個人喫茶店では当たり前のように行われていた焙煎や淹れ方までにこだわったスペシャルティコーヒーの時代が訪れている。

そんな世界的潮流を横目に、喫茶店文化と並行しながら日本のコーヒー消費はさらなる独自性を発揮してきた。そのひとつが「缶コーヒー」だ。毎週のように新製品が発売され、自動販売機でも買える国は日本ぐらいのもの。その独自市場を侵攻しているのが、1杯100円から買える「コンビニコーヒー」というのも日本らしいところだ。

【参考記事】開発に10年かけた、シャンパン級のスパークリング日本酒

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中