コラム

カーネル・サンダースはなぜマレーシアで嫌われた? KFCを脅かすボイコットのうねり

2024年05月10日(金)12時00分

アメリカが直面する「グローバル化の逆風」

KFCをはじめ米企業に対するボイコットのうねりは、いわば「グローバル化の逆風」とも呼べるものだ。

これまでも商品のボイコットによって、外国への抗議の意思が表明されることはあったが、その多くは先進国とりわけアメリカで行われた。

それは単に世論の沸騰しやすさだけが理由ではない。大きな購買力を背景に、外国商品を買わないことがその国に対するプレッシャーになると見込まれることも、アメリカでボイコットが発生しやすい背景になっていた。

第二次世界大戦直前の日本製ストッキング(当時の日本の主力輸出品は繊維製品、特に絹製品だった)の不買運動はその古典的な事例だ。

時にはその対象が同盟国になることもあった。2003年のイラク侵攻にフランスが反対した時にはフランス産ワインやチーズなどがボイコットの対象となった。

その裏返しで、アメリカの企業・商品へのボイコットはこれまで大きな影響をもたらさなかった。2003年のイラク侵攻の際、やはりイスラーム世界ではKFCやマクドナルドへのボイコットが発生したが、今回ほどのインパクトはなかった。

つまり、アメリカ市場はボイコットによって外国にプレッシャーをかける特権をもっていたともいえる。グローバル化によってアメリカの影響力が高まったことは、これを後押ししていた。

これに照らすと、KFCやマクドナルドの売り上げを左右するレベルのボイコットが世界各地で生まれていることは、アメリカがボイコットの逆風にさらされるようになったことを示す。その背景には、グローバル化の進展によって新興国が成長し、米企業の海外市場依存の度合いが高まったことがあげられる。

とすると、グローバル化の進展は米企業のチャンスを拡大させた反面、海外の反応に対するもろさも大きくしたことになる。ガザ侵攻は図らずも世界の大きな変化を浮き彫りにしたといえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

世界のEV販売、1月は前年比3%減 米中が重し

ワールド

EXCLUSIVE-EU、合併規則を20年ぶり見直

ビジネス

バーレ、第4四半期は純損失拡大 コア利益は予想上回

ビジネス

米ナイキ傘下のコンバース、組織体制見直し・人員削減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 7
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 8
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 9
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story