コラム

恩恵とリスク、トルコの壁... スウェーデンとフィランドのNATO加盟にまつわる5つの基礎知識

2022年05月23日(月)17時30分

しかし、それでもスウェーデンとフィンランドの加盟申請を受けて、ロシアが何らかの敵対行為に出る可能性は高い。具体的には、スウェーデンやフィンランドとの国境付近で戦闘機や軍艦による国境侵犯を繰り返したり、国境付近に兵員を駐屯させたりする挑発、サイバー攻撃、ヨーロッパ向け天然ガス価格のさらなる引き上げや供給停止(フィンランド向けのガス輸出停止は決定している)などが想定される。

西側との緊張がさらにエスカレートすれば、ウクライナ侵攻にも影響を及ぼさないはずはない。

ロシアはこれまでウクライナと断続的に和平交渉を行なってきたが、ウクライナのNATO加盟やウクライナ東部の分離独立で平行線をたどり、交渉はとん挫したままだ。緊張の高まりでロシアがさらに意固地になれば、妥協の余地はこれまで以上に乏しくなるとみてよい。

スウェーデンとフィンランドのNATO加盟申請はウクライナ侵攻がさらに泥沼化する一つの通過点になるといえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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