コラム

「タリバンはぬるい」カブール空港爆破テロ実行犯、IS-Kの野望と危険度

2021年08月31日(火)15時35分
アフガニスタンのIS系組織メンバー

アフガン政府に投降したIS系組織のメンバー(2019年11月、ナンガルハル州ジャララバード) Parwiz-REUTERS


・カブール国際空港のテロで「イスラーム国」ホラサン支部(IS-K)は13人の米軍関係者を含む110人以上を殺害した。

・IS-Kはタリバンの「不倶戴天の敵」であり、タリバンもテロを非難している。

・IS-Kのテロは、タリバンとの派閥抗争の一環であり、今後さらにエスカレートする懸念がある。

カブール国際空港での自爆テロ実行犯は、「イスラーム過激派」という括りでは同じでも、タリバンとは犬猿の仲で、その派閥抗争は今後さらにアフガニスタンでのテロをエスカレートさせるとみられる。。

カブール国際空港の惨劇

アフガニスタンから脱出を目指す人々が集まるカブール国際空港で26日、自爆テロが発生して110人以上が殺害された。

そのなかには13人の米軍関係者も含まれていた。米軍関係者がアフガンで一度に死亡した人数としては、2011年にヘリコプターが撃墜されて30人の犠牲者を出した事件に次いで多い。

テロ攻撃を受けたTV演説で、バイデン大統領は「犯人を追い詰め、償わせる」と語気を強め、軍による警備を強化したうえでアメリカ人や協力者の脱出を継続すると強調した。

(編集部注:米軍は30日、アフガニスタンからの撤収完了を発表した)

この自爆テロに関しては、過激派組織「イスラーム国(IS)」ホラサン支部(IS-K)が犯行声明を出している。IS-Kとは何者か。

アフガンでも屈指の凶暴さ

その名の通り、IS-Kとはホラサン(イラン北東部から中央アジアにかけてを指す歴史的な呼称)地方におけるISの支部だ。

2014年にシリアとイラクにまたがる領域で「建国」を宣言したISは、歴史上のイスラーム王朝が支配した中東から北アフリカ、ヨーロッパ南部、中央アジア、東南アジアや中国の一部にかけて領土を広げる計画を発表し、これに応じてIS支持者が各地で「支部」を名乗った。IS-Kはそのうちの一つである。

IS-Kは2000人程度のメンバーを抱えているとみられ、数万人を抱えるタリバンと比べても小さいが、過激派の多いアフガンでもとりわけ凶暴な組織として知られてきた。昨年5月には、カブールの産院が襲撃され、母親や新生児を含む24人が殺害された。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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