コラム

スー・チー拘束でも国際社会がミャンマー政変を「クーデター」と認めたくない理由

2021年02月01日(月)18時20分

恐らくミャンマー軍幹部はこの先進国の立場を理解し、「介入はない」と判断したうえでクーデターに向かったものとみられる。

少数民族迫害がエスカレートする恐れ

その一方で、事実上の軍事政権が復活した場合、ミャンマーでは少数民族の迫害がエスカレートする公算が高い。なかでも2017年から注目されることが多いロヒンギャ問題への懸念は大きい。

ミャンマーの少数民族ロヒンギャは、そのほとんどがムスリムだが、仏教ナショナリズムを掲げる僧侶などによって家屋が焼かれたり、暴行・殺害されたりしたため、現在では隣国バングラデシュなどに70万人以上が難民として逃れている。

この問題では、最高責任者であるはずのスー・チーも、ロヒンギャ迫害を積極的に取り締まらないと批判されてきた。民主化に尽力し、ノーベル平和賞も受賞したスー・チーがロヒンギャ問題で冷淡とさえいえる態度を見せ続けた最大の理由は、ミャンマー軍がこの蛮行に加担していたからだ。

もともとミャンマーでは軍事政権時代から、少数民族の土地を取り上げ、そこに人口の70%を占める仏教徒のビルマ人を移住させる「ビルマ化政策」が進められてきた。これは民主化後も軍の大きな影響力の下で続き、ロヒンギャ問題でも兵士の関与が頻繁に報告されてきた。

すでにクーデターの機運が高まっていた1月初旬には、強制居住区から逃れようとしたロヒンギャ100人が当局に逮捕されている。

事実上の軍事政権の復活は、こうした少数民族弾圧を構造化させるきっかけにもなりかねない。各国の利害関係の影で弱い者ほど泣きを見る構図は、ここでもみられるのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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