コラム

「カリフォルニア大火災は左翼テロ」──陰謀論でトランプを後押しする極右

2020年10月05日(月)18時20分

近年では昨年8月、アマゾン大火災で初動対応の遅れなどを批判されたブラジルのボルソナロ大統領が、証拠を示さないまま「環境NGOが放火したかもしれない」と発言して物議を醸した。ボルソナロ大統領は農業振興のためアマゾン開発を推し進め、農家の野焼きを放置してきたと環境NGOは批判してきた。

カリフォルニア大火災をめぐる極右の陰謀論は、これらを思い起こさせるものだ。

極右やRTが広げた陰謀論を簡単に信じた人がいるように、陰謀論の拡散は発信者の問題であることは言うまでもないが、受け手の問題でもある。

何か災厄に見舞われた時、人は他人とりわけ自分が嫌いな者のせいにしがちだ。

これまでになく「責任」が問われる風潮は、これに拍車をかけているとみられる。地球温暖化のように「自分たちにも責任がある」ような原因ではなく、悪意をもった誰かのせいにする方が気楽だし、間違っていても自分たちは責任を負わなくてよいからだ。

しかも、出来事やニュースの回転が速く、一つひとつのことがらに時間をかけて考えなくなっているなかでは、よりシンプルな、イメージしやすい解が求められやすい。そうしたなか、ネット上で気に入った情報だけをつまみ食いする傾向は、これを助長する。

その意味では、現代人にはとりわけ陰謀論を信じやすい特徴があり、これが利用されているといえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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