ドイツで極右と極左1万人が衝突 彼らを煽る「自警主義」とは
過激派イデオロギーの衝突で笑う者
ただし、国家の法や制度を無視して自警主義に傾いた過激派イデオロギーは、自由や民主主義を骨抜きにするだけでなく、我々の日常生活そのものを脅かしかねない。いかに不十分であっても、正義の判断と執行を国家に委ねることで、人間社会は安定を確保してきた。これを個々人に委ねることは、絶え間ない報復の連鎖になりかねない。
一方で、過激派イデオロギーの衝突で笑う者もある。欧米的な民主主義を嫌い、その破壊を公言してきたイスラーム過激派にしてみれば、テロとの戦いや難民危機でヨーロッパが動揺し、人権や自由で覆い隠されていた人種差別主義があらわになっただけでなく、イデオロギーの衝突が混乱をもたらす状況は、大きな成果となる。また、中国やロシアの国家主義的な支配者たちにとっても、「秩序」を最優先にする自分たちの支配を正当化する有利な条件になる。
冷戦終結後の世界では自由と民主主義がグローバル・スタンダードとなり、欧米諸国はその「本家」として大きな影響力を持ってきた。その意味で、自由と民主主義のネガティブな側面をあらわにする過激派イデオロギーの衝突の広がりは、欧米中心の世界が傾く一つの兆候を示唆するといえるだろう。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。他に論文多数。
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